メロウな愛に浸ったリオン・ウェア宇宙は広い……そして、とてつもなくエロい
愛が滴る新作を完成させたリオンのメロウ語り
マーヴィン・ゲイ“I Want You”を筆頭に数え切れないほどの名曲を書き上げ、ロマンティックかつエロティックなムードで聴き手をメロメロな気分にさせてきたリオン・ウェア。まだまだ現役だ。2年前にリリースしたドン・グルーシンとの共演盤に続く新作『Love's Drippin'』(通算9作目。完全なソロ作としては8年ぶり)でも、エロ&メロウなリオン節は健在。曲間に配された水滴のSEも、何だかエロティックな想像を掻き立てる……。
「このアルバムでは僕の信念がずっと変わらないことを示したんだ。ロマンティックだったり、肉欲的だったり、優しかったり、それに天真爛漫なところもある。『Love's Drippin'』っていうのは、世の中が発展するためにも(ラヴ・ジュースが)滴るほどに愛に浸らなきゃいけない、って意味だよ」。
新作には、幾人かの気になる面々が参加しているが、特に70年代からの付き合いとなるワー・ワー・ワトソンと共作した“Saveur”はハウス調のダンス・チューンに仕上げられ、アルバム全体の流れを引き締めている。
「僕のアルバムには昔から格好いいビートやベースラインを採り入れた曲がある。ハウスというかディスコというか、ダンスっぽいフィーリングが好きなんだよ。それには僕がデトロイト出身だっていうのも関係してるんじゃないかな。僕はロマンティックで甘い音楽が大好きだけど、同時にダンス・フロア向きの曲も好きなんだ」。
では、そんなメロウでダンサブルな曲たちはいったいどうやって生まれてくるのか、興味を惹かれるところだ。
「僕はロマンティックで、官能的で、それにとても信仰深い人間でね。その3つが揃っているから、目が覚めている間はずっとインスパイアされている感じなんだ。だから、僕にとって曲を書く時のシチュエーションというものはわざわざ探しにいくものじゃなくて、自分の内面にいつでもあるものなんだよね。1日24時間、いや25時間いつでも。この地球上に生きていること自体が僕自身をインスパイアすると言っていいかもね。この星にはたくさんの情熱が溢れていて、それが僕を動かすんだ」。
「本当にやりたいことが多すぎて時間が足りない」とも話すリオン。みずから運営するレーベル、キッチンについても、「忙しい台所のようになるといいね」とヤル気満々だ。90年代以降もオマーやマクスウェルなどに楽曲提供をしてきたリオンは、今後も若い才能や新しい可能性には常にオープンであり続けたいという。そして現在、当のリオンは、12年前から構想を練っていたという次回作『Night In Brazil』の制作に取り組んでいるとのこと。
「次のアルバムもロマンティックで官能的でエロティックな作品になるはずだよ。僕を〈官能修道士〉って呼んでくれてもいいかもね。僕にとって音楽とは人間性の探求さ。アルバムごとに僕自身が成長し、オーディエンスも僕といっしょに成長していくことをいつも願っている。仕事だから音楽をやってるわけじゃない。生きるために必要だからやっているんだ……」。
発言そのものがロマンティック&メロウ……。リオン・ウェアはリスナーの期待を裏切らない人だ。