いまだに〈インディー落ち〉とかいう言葉があります。メジャー契約に対する〈都落ち〉的な意味合いを含む物言いですが、そんな言葉がすでに時代錯誤なことは、パンクやヒップホップにおけるインディー勢の活躍を例に挙げずともわかるでしょう。もちろん、特にR&Bでは大メジャーでコマーシャルな作品ならではのおもしろさも重要ですし、メジャーは悪で、インディーだから美しいとかいうような〈インディー幻想〉のようなものはそもそも存在しないように思います。ただ、R&Bが流行の最先端たりうるものに成長したことである種のアーティストの音楽性がそこからこぼれ落ちてしまいがちなのは残念な事実です。流行のルールに沿ったメジャー作品はおもしろいですが、個々のアーティストや彼らが生み出す音楽そのものに共通のフォーマットを求めていいはずがありません。そんなわけで、近年は長らく人気を獲得してきたメジャー・アーティストたちが、みずからインディーに移行する動きが盛んになってきているのです。個々のアーティストが在るがままに自身の本質を弁え、自身の音楽性を表出できる、そんなインディー産R&Bの魅力をここでは探っていきましょう。