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Fear, and Loathing in Las Vegas 『Dance & Scream』

連載
SPECIAL FEATURE
公開
2010/12/17   15:18
更新
2011/01/20   13:10
ソース
bounce 327号 (2010年11月25日発行)
テキスト
文/有島博志 (GrindHouse)

 

激情と静寂──相反する要素が縦横無尽に共存/融合する新たな世界

 

 

「なるほど〜、こういうところからこういうタイプのバンドが突然出てくんのね〜」と感心しきりで、かつ、ただ今絶賛前のめり中なのが、このFear, and Loathing in Las Vegasだ。2008年に神戸で結成された6人組。〈神戸産バンド〉っていうのも普段あんまり耳にしないし、突然変異的な混ざり具合が見事なまでに実践/体現され、随所に〈遊び心〉もしっかり散りばめられている独自の音楽性も非常に魅力的だ。しかも彼ら、まだ若い。平均年齢19歳ときた。この、まだ未知数ながらも〈可能性〉〈将来性〉を大いに秘めた彼らが、今後日本の音楽シーンをいい意味で混乱させ、しっちゃかめっちゃかにすることは間違いない! その彼らがついに、待ち焦がれた初フル・アルバム『Dance & Scream』をリリースした。

So(ヴォーカル/プログラミング)、Minami(「ヴォーカル/キーボード)、Taiki(ギター)、Sxun(ギター)、Mashu(ベース)、Tomonori(ドラム)という顔ぶれ。上記したように結成は2008年だが、現布陣に落ち着いたのはSoが加入した2009年だ。『Burn the Disco Floor with Your "2-step"!!』(2009年)、『Evolution~entering the new world~』(2010年)なる2枚のE.P.を無料配布しつつ、さらにダブルAサイドのシングルCD『Take Me Out!!/twilight』を500円ワンコインで販売し完売。そして、あちこち&さまざまな相手とライヴを行うことで、彼らは短期間でグイングインと頭角を現していき、平行して独自のファンベースも築き上げていった。音源無料配布というのはインディー界では決して珍しいことではない。だけどそれが功を奏したのは、彼らの音楽性の第一印象が強烈で、口コミなどで確実に広がっていくに足るものであり、そしてライヴを精力的に繰り返すことで、早い時期から音楽性とライヴとバンドの〈外観〉がうまく重ね合わさったからだ。バンドが歩みを進め、ひとつひとつ階段を上がっていく上で必要な、〈考えあぐねる〉という労を要するプロセスを、彼らは実に短期間でスムーズにやってのけた。ここに、彼らの凄さのひとつがある。つまりボトムがとてもしっかりしているわけだ。

これまでに、私は彼らのライヴを2度体感している。いわゆるスクリーモ、ポスト・ハードコア直系の衝動性、喚起力、押しの強さ、メタル特有の重量感と、そしてエレクトロニカなどに代表される高揚感に、アゲアゲ感がときに縦横無尽に、またときに酒池肉林的にぶつかり合うライヴは、〈鋭角的なカオス〉と〈楽しさの贅をつくしたハッピー感〉を生む。ライヴが進むに従い、このふたつの要素が共存共栄しながら極上のクライマックスを作り出す。だからこそ彼らのライヴはとことん楽しく、徹底して発散することができ、スカーッと気持ちいいのだ。

『Dance & Scream』は今絶対に聴くべき作品だ。日本のロックだ、洋楽ロックだ、というような〈分け隔て〉をコレッぽっちも感じさせない、とてもcoolな一作だ。

 

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