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Fear, and Loathing in Las Vegas 『NEXTREME』

連載
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公開
2011/07/13   17:59
更新
2011/07/14   17:32
ソース
bounce 334号 (2011年7月25日発行)
テキスト
文/青木正之、荒金良介

 

ジャパニーズ・ラウド・ロック界に新風を吹かせる急先鋒の新作が完成! これを聴かずに夏は越せないよ!

 

Fear, and Loathing in Las Vegas

 

彼らの個性がより明確に表れたアルバム

Fear, and Loathing in Las Vegasはいま、日本のラウド・シーンでいちばん新作が待たれている注目の若手バンドだ。2008年に地元・神戸で結成。翌年にSo(ヴォーカル)が加わり、ツイン・ヴォーカルを擁する現在の6人編成に固まった。昨年、平均年齢19歳という若さを刻み付けたファースト・アルバム『Dance & Scream』をタワーレコード限定で発表。メタル、エモ、スクリーモなどにディスコ調のダンス・ミュージックを混ぜ、底深い闇感と天井知らずの明るさが共存したサウンドでシーンに一石を投じる。その音楽性同様、僕はライヴ・パフォーマンスにも強い衝撃を受けた。例えば、Soがメインで歌うなか、後方で鍵盤を弾くMinami(ヴォーカル/キーボード)が突然マイクを握って前に飛び出し、激高シャウトをブチかます——そんな耳目を引くステージが話題を呼び、今年はJの14周年スペシャル・ライヴや難波章浩のレコ発ツアーに出演するなど、急速にバンドの知名度を高めている。

そして、彼らが前作から8か月という短いスパンでミニ・アルバム『NEXTREME』を完成させた。ゲーム音楽のようなイントロで幕を開け、バンドの個性をさらに打ち出した野心作だ。獣の如きスクリームでアジテートする反面、聴き手の心を奪う流麗なピアノを奏でたりと、静と動の起伏がよりいっそう激しくなっている。また、新境地を切り拓いた初の日本語曲“Believe Yourself”は本作の大きなトピックだろう。シンプルな曲調と相まって、飾りすぎない透き通ったメロディーの良さにドキッとさせられる佳曲である。また後半の“interlude”〜“Short but Seems Long, Time of Our Life”の流れも素晴らしく、特に後者は美メロからカオス渦巻く場面展開を見せるスリリングなサウンドで、ラストまで飽きさせない仕上がりだ。*荒金良介

 

モッシュピットとレイヴ・パーティーを繋ぐバンド

エレクトロのムーヴメントが契機になり、メインストリームからアンダーグラウンドまで、あらゆる音楽形態においてダンス・ミュージックの意匠を凝らすことは世界であたりまえの状況になっていますが、Fear, and Loathing in Las Vegasもそういった潮流にあるバンドのひとつと言っても良いでしょう。でも、若さがなせる業なのか、彼らのダンス・ミュージックに対するアプローチの豪快さや大胆さたるや他の誰よりも抜きん出ていて、思わずニンマリしちゃうぐらい凄いんですよ。それは今回のミニ・アルバム『NEXTREME』にも顕著で、ハウス・アレンジで4つ打ちにするとか、エレクトロっぽい音を入れるなんていう小手先のアレンジには目もくれず、ハッピー・ハードコアや90年代のユーロダンスに通じる性急なビートやアップリフティングで煌びやかなシンセを、何のためらいもなくねじ込んでいるんです。

そんな彼らの醍醐味を味わえるのは、オープニングを飾る“Chase The Light!”。8ビットでピコピコとスタートし、整合感のあるバンド・サウンドに導かれてオートチューンのエモいヴォーカルを乗せたかと思いきや、ダイナミックな咆哮が炸裂するデス・メタル・パートへ、またそこからキラキラしたシンセやメロディーも溢れ出して……と、もうカオスとしか表現できない怒涛の流れ。こんな混乱した状態でラストまで突っ走れる彼らって……! おまけにこの狂乱のサウンドから得られるカタルシスはレイヴで体験できるそれと近い感覚があり、モッシュピットとレイヴ・パーティーを繋ぐバンドなのではないかと。いまはロック・バンドとの対バンやイヴェントを中心に活動をしているわけだけど、将来的にはレイヴにも出ちゃえばいいのに、って無責任に考えている次第です。*青木正之