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SonarSound Tokyo 2012

公開
2012/03/09   12:58
ソース
intoxicate vol.96(2012年2月20日発行号)
テキスト
Text:久保正樹

テクノロジーとアートフォームの大発展場
SónarSound Tokyoが今年もやってくる

94年にスペイン・バルセロナで誕生し、「最先端エレクトロニック・ミュージックとメディアアートの祭典」として、いまや世界最大規模のフェスティバルとなった「Sónar」。その日本版『SónarSound Tokyo』が、今年も2日間に渡り東京で開催される。いまでこそ様々なメディアを利用した作品や、最新の技術や手法を用いるアーティストが一般的となり、活動の場も当然のように存在するが、その地盤を築き、世界各地に豊かな土壌を切り拓いたSónarの功績は大きい。ロンドン、NY、サンパウロ、フランクフルト、シカゴ、東京と拠点を移しながらブランド力を拡大し続けるSónarだが、ここでいま一度その意味を問い直してみたい。

そもそもメディアアートとは、(教科書的に説明すると)最新の技術的発明・媒体に触発されて生み出されるこれまでにない表現形態のことである。フルクサスのマルチメディア作品、ナム・ジュン・パイクのビデオアートなどが良く知られるところだが、近年ではコンピューターを主体に制作された作品に集約されるのではないだろうか。それゆえにメディアアートがぐんと身近になり、かつてのパンクのように誰もが参加でき、より直感的にアイデアを形にできる反面、テクノロジーに支配された退屈な「DIY」が氾濫しているのも事実だろう。


The Cinematic Orchestra

さて、ここで2日目のヘッドライナーであり、間もなく新作『イン・モーション #1』をリリースするUKのエレクトリック・ジャズ・バンド、ザ・シネマティック・オーケストラを紹介しよう。その名のとおり、ジェイソン・スウィンスコーを核とした音楽家による映像的サウンドが特徴だが、作品を発表するごとに音楽と映像の結びつきが強くなり、その垣根は意味を無くしている。それはまさにSónarの理念を体現するものであり、テクノロジーに寄りかからず、また音楽ありきでも映像ありきでもないポップカルチャーのポスト・エヴリシングを見せてくれるものだ。「愛と喪失」をテーマにした未制作の映画のサントラ『Ma Fleur』に続く新作では、現代アメリカ写真界の巨匠ポール・ストランドとチャールズ・シーラによる無声映画『Manhatta』や、マルセル・デュシャン、マン=レイ、エリック・サティらの出演でも知られる『Entr'ace(幕間)』など20年代の実験映像とのメディアと時空を超えた対話のようなモダニズム・セッションを聴くことができる。また【ブレインフィーダー】からの作品でも知られるピアニスト、オースティン・ペラルタや、今回単独パフォーマンスも披露する新世代ビートメイカー、ドリアン・コンセプトによる楽曲も収録されていて、現在進行形のバンドの姿と、フェスでのライブセットを予見させる内容となっている。

その他の出演者を見てみると、初日のヘッドライナーを務めるスクエアプッシャー、2010年末のブルーノート東京公演も記憶に新しいヴィンセント・ギャロ、UKダブステップ界のネクストをゆくマウント・キンビー、グラスゴーの新鋭ラスティのほか、日本からは『アルス・エレクトロニカ 2010』ゴールデン・ニカの受賞も記憶に新しい黒川良一、大阪発無国籍ダンスホールがエレクトロにクラッシュするオオルタイチ、さらにロンドンを拠点に活躍するアンカーソング、メルグリム、タイピングモンキーズらの出演が決定している。そしてもう1人の注目はこの人。いまや【ワープ】の看板であるクラークだろう。4月に発表される新作『イラデルフィック』は、世界各国で録音され、ヴィンテージから最新のものまで様々な機材が使用された意欲作だ。また、まったく弾いたことがなかったというギターをマスターして大胆に導入したり、マッシヴ・アタックやトリッキーの作品でもお馴染みの女性シンガー、マルティナ・トップレイ・バードをフィーチャーしたりと、いつになく挑戦的な内容となっておりステージへの期待は膨らむばかりだ。

テクノロジーがアーティストに新たなインスピレーションを与え、インスピレーションがテクノロジーに新たな息を吹きこむ。そんなイメージを独自の手法で切り取り、驚きと発見ともに鮮やか手口で見せてくれる『SónarSound Tokyo』。技術の進歩がある限りアーティストの探求が永遠に続くように、私たちも作品を媒体にアーティストとの対話だけでなく、周りのオーディエンス、さらにはそれらすべてを包みこむ世界とのコミュニケーションを図り、知覚の拡張と冒険を永遠に続けていけるに違いない。

SonarSound Tokyo 2012

4/21(土)オールナイト・イヴェント

出演:Squarepusher/Clark/Ryoichi Kurokawa/Dorian Concept/Mergrim
Red Bull Music Academy presents SonarDôme
Global Communication/Akiko Kiyama/Kez YM/Hiroaki OBA

4/22(日)デイ・イヴェント

出演:The Cinematic Orchestra/Vincent Gallo/Mount Kimbie/Rustie/Anchorsong/Oorutaichi/Typingmonkeys
Red Bull Music Academy presents SonarDôme
Hudson Mohawke/Jesse Boykins/sauce81/Daisuke Tanabe/Yosi Horikawae

会場:ageha│Studio Coast(東京・新木場)

※出演者のラインナップは3月上旬時点の情報です。追加出演アーティストについての情報はオフィシャルサイトにてご確認ください。

http://www.sonarsound.jp/

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