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ブラジル映画祭2012 8th FESTIVAL CINEMA BRASIL

カテゴリ
EXTRA-PICK UP
公開
2012/10/10   12:11
ソース
intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)
テキスト
文/佐藤由美

映画『エリス・レジーナ ~ブラジル史上最高の歌手~』

貴重な音楽ドキュメンタリー『エリス・レジーナ〜ブラジル最高の歌手』『バイアォンに愛を込めて』含む8作品一挙上映!

地道にブラジルの作品を紹介し続けてきた当映画祭も、8回目を迎える。近年なかなか単独上映かなわぬ分野・領域とあって、年に一度の逃せない機会だ。ほぼリアルタイムで届く現地の話題作……本誌読者諸賢にとっての今回の目玉は、やはり貴重な2本の音楽ドキュメンタリーフィルムだろうか。

『エリス・レジーナ~ブラジル史上最高の歌手~』

73年、サンパウロTV2の番組「エンサイオ」に登場した、今をときめくスター歌手エリス、28歳の映像。自身の生い立ち、芸歴のほか、彼女が採り上げてきた楽曲の魅力や作者との出会いについて、随時パフォーマンスを挟みながら、シンプルに語っていく。別段の聞き手がいるわけではなく、客もおらず、独白から自然にイントロへ。歌い終わるや、絶妙の間合いで、再び独り語りへと移る。ほとんど編集・カットのない作りが、かえって新鮮。白黒ながら、照明とカメラワークだけで見せてくれる。

ピアノ、ベース、ドラムスのトリオは、79年の来日時と同じ不動のメンバーで、ジャジーな表現が秀逸。ときに、待機中の彼らの表情も映し出される。MPBが卓越した一人の女性歌手により牽引され、新進気鋭のコンポーザーが続々と彼女のもとへと吸い寄せられるさまが、ありありと浮かぶ。エドゥ・ロボがジルベルト・ジルを呼び、ジルがミルトン・ナシメントを紹介……といった具合に。MPB絶頂期を体現した輝ける歌姫の、素顔もさりげなく窺える、圧巻スタジオ・パフォーマンスの記録だ。

映画『バイアォンに愛を込めて』

『バイアォンに愛を込めて』

1990年代初頭のバイーア旋風、続く90年代末以降のノルデスチ(北東部)人気、特にペルナンブーコ州都レシーフェの求心力によって、日本でにわかに脚光を浴びた感のある「バイアォン」のリズム。いかにこのリズムが、地方発のカウンターカルチャーとしてシーンに急浮上し、欧米でもてはやされたのか、現役スター歌手たちへどんな影響を与えたかが、貴重な映像と取材で次々と明かされていく。

19世紀を通しノルデスチで好まれた舞曲に由来するバイアォンを、ルンバやフォックストロットなど外来勢力に対抗、時流を変革する起爆剤として音楽市場に売り出したのが、ペルナンブーコ州出身アコーディオン奏者、ルイス・ゴンザーガだった。今なお彼の風貌と歌声は、バイアォンと同義語だ。

そして、第二の国歌とも謳われる《アザ・ブランカ(白い翼)》はじめ、数々の名曲をゴンザーガと共作した名相棒が、同州出身のウンベルト・テイシェイラ。両者はリオで出会い、46年に成功を手にする。弁護士の肩書きを持ち、「ドトール(先生)・バイアォン」の尊称を授かった彼こそが、映画の真の主人公。娘デニーゼの、亡き父を追い求める姿が、回顧ドキュメントの伏線となっている。

特別ライヴ映像から、少なからず人生をノルデスチ音楽に捧げてきた著名人や、後年バイアォンに目覚めたアーティストのコメントまで、諸説を平等に網羅。「口語表現で大衆的、だが韻を踏んで文学的」な、哀愁帯びるバイアォンの魅力とともに、生涯で400曲余を残したテイシェイラの実像に迫る。

《アザ・ブランカ》歌詞の一節、「君の目と同じ緑色の大地」同様、緑色の目の女性を愛したというテイシェイラ。52年の名曲《カルー》を、緑の目をしたシコ・ブアルキが歌う、粋な計らいもある。

長編部門、『センチメンタルなピエロの旅』ほか

旬な話題の最新作では、完成度の高いコメディ&ヒューマンドラマ『センチメンタルなピエロの旅』がお薦め。人気俳優セルトン・メロの、ほのぼのとした味わいが光る。1940年代に活躍したボタフォゴ所属選手の実人生を描く『サッカーに裏切られた天才、エレーノ』。女性遍歴と傲慢さゆえに疎まれ、やがて身を持ち崩し、残酷な末路へ。ショッキングながら、華麗なモノクロームの世界。『トゥー・ラビッツ』は、バイオレンス&クリミナルストーリー。錯綜する斬新手法が評判を呼び、すでにハリウッドでのリメイクが決まっているという、超話題作だ。

ブラジル映画祭2012  8th FESTIVAL CINEMA BRASIL

10月6日(土) から約1ケ月に渡り、東京・大阪・京都・浜松の4都市で成長著しいブラジルのエネルギーを感じる日本未公開作品8本を一挙上映!

東京 10/6(土)~12(金)ユーロスペース
大阪 10/13(土)~19(金)シネ・ヌーヴォ
京都 10/20(土)~26(金)京都シネマ
浜松 10/27(土)~11/2(金)TOHOシネマズ 浜松

http://cinemabrasil.info