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Open Reel Ensemble/回典〜En-Cyclepedia〜

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/05/07   12:37
ソース
intoxicate vol.103(2013年4月20日発行号)
テキスト
text:高野直生(渋谷店)

録音と再生、そして回転。ただそれだけのことなのに何故にこんなにも面白いの?

それは、忘れ去られた過去の遺物であった。

筈、だったのだが。彼(等)は、出会ってしまった。そして〈それ〉は、本来の用途を遥かに超えた壮大な意義を含んだ存在へと変化を遂げることとなる。これはもはやロマンとしか言いようのない、素晴らしい〈現在〉を描くアートと音楽の旅路である。大人の科学マガジン編集長の西村氏の言葉をかりるなら「実験にあふれた彼らの音楽は、懐かしく新しい」。そう、〈過去〉として存在が〈未来〉を生み出していく。その軌跡の一端をとらえた〈好奇心の塊〉を思う存分ご堪能いただきたい―。

旧式のオープンリール式磁気録音機を現代のデジタル機器と組み合わせ、楽器として演奏する、世界的にも稀有な音楽プロジェクト、オープンリールアンサンブル。その独創的な活動は音楽界に止まらずメディア・アートとしても注目を集め、その活躍ぶりはファッション界までも波及し、宮前義之によるISSEY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)パリ・コレクションのランウェイに2012-13年秋冬から継続してオリジナルの楽曲を提供している。最新2013-14年秋冬コレクションではライヴパフォーマンスを披露しショーを大いに盛り上げた。そんな、〈回転〉に魅せられ取り憑かれた男達の飽くなき探究はさしずめ研究者の様相であり、松岡正剛、大友良英、宇川直宏、菊地成孔、zAk、高木正勝といった豪華ゲストとの対談からオープンリールの歴史ないしは録音メディアの歴史を紐解いてゆき、彼らが何故其処に辿り着くことになったのか、そして可能性とその未来とは…。さらに彼らが本作限りのプロジェクト、オープンリールアンサンブルとなって、21台のデッキを駆使した新曲を披露するまでの実験場面やリハーサルの模様を捉えたドキュメントから圧倒的なパフォーマンスを収めたDVDも同梱。銀河の如き〈回転〉の魅力がふんだんに盛り込まれた内容となっている。