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(第8回)白夜の地下室/そこにあってふれられないものについてのディスクール・断章

大友良英からもらった音楽の未来への希望

連載
BO NINGENの人生一度きり
公開
2013/09/30   14:00
更新
2013/09/30   14:00
テキスト
文/Kohhei Matsuda(BO NINGEN)


大友良英からもらった音楽の未来への希望



帰国後、UKの携帯を日本に忘れたことに気がつき愕然。あちらでは1回も使ってないのに。
しかしその後、数週間のスケジュールを考えると別にあってもなくてもいっしょ(家での作業が多いので。つまり外に遊びに出られないので)と思い込む。何のシンクロニシティーかわからないのだけれども、アルバム・アートワークの仕事が立て続けに入ったため、自宅に軟禁状態が続く。会いたい人にも会えないが、携帯もないしまあいいか、と思い込む。

▼これからリリースされるKohheiがアートワークを手掛けた作品

Keiko Kobayashi『Broadway Market』
ご存知Taigen君の母君のアルバム。ナチュラルな歌声とそれを彩る職人的なバッキング。僕の得意なスタイルで行くとまったく合わないのはわかっていたので苦労しましたが、結果的に自身のカラーを残しつつ、雰囲気を合わせられたので満足。機会があればぜひ手に取ってみてください。

BO NINGEN『Line The Wall LP』
UKでは昨年秋に、今年頭には日本盤もリリースされたサイケデリック・ミュージック作品のLP盤が出ることになったので、それのアートワークを。基本的にはオリジナルのモノをアダプトするだけ……と高を括っていたら、解像度の問題、色の問題、そして僕のヴィンテージ・マッキントッシュの問題(熱すぎて触れるのも嫌だった)などに悩まされ難航。10月に出ます。

EAST INDIA YOUTH 『Total Strife Forever』
われらがストールン・レコーディングスが新たにサインしたナイスなシンセ・ポップ・ユニット。4つ打ちからグリッチから聖歌からドローンなどをポップにまとめたナイスな盤。来年頭にリリースだそう。これはまだ表ジャケしか終わっていない。



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デスクの左側の壁。リファレンスとも護符ともつかないポストカード、新聞の切り抜き、写真たち。
行き詰まった時の癒し



また、盟友・石田悠介監督の最新作となる、Royal Pussy Autumn & Winter 2013コレクションのイメージ映像にサウンドトラックを付けるという、なかなかにスリリングなことも。彼はBO NINGENのシングル“Henkan”のMVをやってくれた才人です。毎晩、Skypeで夜が明けるまで(時差があるので)〈青春とは何か〉について論議しながらの作曲/録音/編集。重層的/円環的な構造と、ヒリつくような青春感を持った良作。ここ数年ずっと気になっている、映像と音楽(視覚と聴覚)の関係性についてのいろいろな実験ができてかなり有意義なプロジェクトでした。酔っぱらいながらシュトックハウゼンやBO NINGENの曲を合わせてみたり(ある意味合うんだけど)。





その合間に、羽アリの大量発生、大掃除、炊事、洗濯、引っ越し後の荷物の整理、翻訳業、散歩など。



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焼きそば。アジアンな味付けの焼きそばっぽい代物。新居の近くでも手に入ることがわかり狂喜。
かなりの中毒性



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アブニーパーク。新居から徒歩数分に位置する墓地。鬱蒼と茂る森に呑み込まれそう。
突然廃墟化した教会が現れたり、陥没した墓が多数あったり。
ニック・ドレイクなど聴きながら歩くとハマりすぎて怖い。
晴れた日にはリチャード・ヤングス“Sapphie”なんかもいいですね、愛犬への追悼の歌ですし



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スタジオ練習/曲作りの合間に、スタジオの裏庭で。新作お楽しみに



そういえば、先週はロンドンが誇るちょっと変わった音楽の巣、Cafe Otoによく行きました。大友良英さんが来てらっしゃったので。1週間ほど、大友さん関連のさまざまなイヴェントが行われていましたが、僕は彼のダイレクションによる〈音遊びの会〉と、北欧の前衛ジャズ・トリオであるファイア!への客演、ピアノ・ソロ/ロンドンのミュージシャンとの共演の3つにお邪魔しました。
どれも素晴らしく、音楽の未来への希望が持てて、止まりかけていた足をまた動かすことができるだけのエネルギーをいただいた3日間。大友さんの才能のあり方、活動の仕方にはとても影響を受けているので(デレク・ベイリーまで線を引けるギタリストとして、また、いまパッとリファレンスが出ませんが企画者/プロデューサー/アレンジャー/作曲家として)、お話ができてとても嬉しかった。僕が彼の音楽について考えていたことの更新/確認も(実際の演奏を観ることによって)できましたし。



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そしてライヴ。帰国後すぐにスコットランドのプレストン、ブリストル近郊のドーセットという街での週末2本立てが続く。スコットランドでは宿泊場所近くの湖で泳ぎ、ブリストル近郊でのわりとポスト・ロック/マス・ロック(という言葉は嫌いなんですが。どっちも正しく使われていないので)寄りのフェスティヴァルでは、〈YOHKAIステージ〉という頓狂な名前(後で聴いたらBO NINGENの初作に収録された“Post Yohkai”から取ったらしいです。感謝)の舞台で演奏。綺麗な夜空に流れ星を見るも願い事はいまだ叶わず。その後、友人の実家である巨大なファームに宿泊。翌朝、牧羊犬と戯れ、羊たちを視察した後、〈エンド・オブ・ザ・ロード・フェスティヴァル〉へ。夏の終わり。



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ライダー。これくらいの量は欲しいものですね。不っ味かったけど。
ぬるいビールを呑むと、帰って来たなーと思います



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牧羊犬とその子供たち。子犬たちの愛くるしさに卒倒しそう



9月には恒例のフリージャズ・ボート・パーティー〈ボート・ティン〉へ。スティーヴ・ノーブル、ジョン・エドワーズ(欠席)、アレックス・ウォードのパワー・トリオであるN.E.W、スティーヴ・ベレスフォードとマーク・サンダース、チャールズ・ヘイワードと仲間たちという豪華なメンツを満喫。途中、平衡感覚を失い、〈とうとうキタか〉と思ったら船が揺れていた。


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