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ジャン・フルネ&都響『サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」/フランク:交響曲』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2014/01/06   10:00
ソース
intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)
テキスト
text:タワーレコード本社 北村晋


フルネ生誕100年記念を締めくくる、都響との珠玉のライヴが登場

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2013年は様々な音楽家のアニバーサリー・イヤーでもあったが、とりわけ日本に所縁の深い音楽家と言えば、フルネの名前を真っ先に上げる方もそう少なくはないだろう。今年はフルネの生誕100年であると同時に没後5年という節目の年でもある。この2枚組は2002年と翌年のライヴ。なぜ今まで発売されなかったのか不思議に思える出来だ。メインの2曲は1985年と’87年に都響とスタジオ録音した曲でもあるが、今回の演奏ではフルネ独特の優雅さはそのままに、よりテンポをゆったりとった重厚な表現も見られ、とりわけ最終楽章における壮大さは聴く者の胸を打つ。どちらも90歳前後の指揮者とは思えない見通しの良さがあり、演奏後の熱狂も頷ける。2005年の引退演奏会も凄かったが、今回のライヴはそれに匹敵するかも知れない。

今回初めて発売されるこのディスクを聴いてまず脳裡に浮かんだのは、都響の充実度もさることながら、フルネが日本の楽壇の発展にいかに寄与したか、つくづく思い知らされたということである。フルネが振るとオケの響きが一変した、という記述を見かけることがあるが、誤解を恐れないで言うならば、日本のオケでここまでフランス音楽の典雅さや柔和といって良い独特な音色が出せるのは、今聴いても本当に驚きである。フルネが日本のオケと聴衆に残していったこれらの響きは、精神的に意味合いにおいても、現在でも日本の音楽界に残されているのだろうか?足跡があるなら無理をしてでも辿りたい気持ちにさせる、この素晴らしい音源の出現はまさに記念イヤーに相応しい。

この盤は響きが良く捉えられており録音も素晴らしい。悠久の時間の中を漂うかのような余韻を人々の記憶に残していったフルネ。これらの音源がある限り、我々は未来にわたってその時を聴くことができる。音源の発売に感謝したい。



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