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Three Blind Mice Record復刻シリーズ

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o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2014/01/07   10:00
テキスト
text : 長門竜也


伝説のジャズ・レーベルの復刻シリーズが、遂に完結!

自主制作盤が商業ペースに乗るわけもない時代、斬新で旺盛な新人を発掘し大量のレコードを発表したスリー・ブラインド・マイス(以下、TBM)。常習性ある高レヴェル・カッティングもさることながら、それは周到な現場調査と本質を見抜く炯眼の勝利だった。

主宰の藤井武は言う。「本物の感動が見出せない日本のレコード制作法が歯痒かったんだ。ジャズは日夜流動し、次にいつ同じ演奏が聴けるとも分からない。だから日々現場へ足を運び、才能を見極め、即刻盤に記録していったのさ。対象は外国人でもよかった。ただ作るのならその本人と対面し、目の前でじっくり音が育つのを見たい。才能ある日本人であっても彼の代表作となる手応えがなければスタジオに入らないし、スタジオでも納得のできない演奏にはストップをかけてきた。こうしろと促すためでなく、まだキミの核心にまで辿り着いていないとコメントするためにね」。そのため出来るものがどれも、日本人ならではの趣向と熱量が極まったものばかりとなったのもうなずける。

6月に始まった全7期「TBM復刻シリーズ」も、遂に最終期(高音質のBlu-spec CDに紙ジャケ仕様。完結記念の特典あり!)。ここにはもとより大衆に媚びずも、日本ジャズを代表してきた7作が並ぶ。前衛派に属する金井英人や森剣治、エキセントリックなピアニスト菅野邦彦、したたるようなタッチでブルースを奏でる山本剛、同社主催の新人登竜門ジャズ・グランプリ勝者のジミー・ヨーコ&シン(その雅楽ジャズ作は今回初CD化)。若き俊才らは次にメジャーへ昇格したが、その歴史まで甘酸っぱく薫ってくる名盤ばかり。

「これがTBMの音というものはない。でもライヴでまだ無名の奏者に一瞬だけ心を打ち振るわせられ、それが何なのかを見極めて、煮詰めて、再現させる。いや、その瞬間を待つことが唯一僕の仕事なのさ。TBMの音にはつまり、ライヴの現場にあるあの貴重にして裕福な瞬間がしっかり刻まれてるということだね」



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