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(第21回)ジョン・コングルトンのマジックで大人の女性へ――エンジェル・オルセン

連載
岡村詩野のガール・ポップ今昔裏街道
公開
2014/03/03   18:30
更新
2014/03/03   18:30
テキスト
文/岡村詩野


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ライター・岡村詩野が、時代を経てジワジワとその影響を根付かせていった(いくであろう)女性アーティストにフォーカスした連載! 第21回はジョン・コングルトンのマジックで大人の女性へと変身したエンジェル・オルセン



先頃リリースされたセイント・ヴィンセントの新作『St.Vincent』が素晴らしいことになっています。いち早く公開された最新のアーティスト写真やアートワークを見て衝撃を受けた人も少なくなかったようですが、現在の彼女はその見た目さながらにゴージャスで屈強。しかもこれまでの可憐なエレガントさ、素っ頓狂なユーモラスさもちゃんと持ち続けています。スフィアン・スティーヴンスの作品に関わっていたり(初来日公演にも同行)、それ以前にもポリフォニック・スプリーの一員として活動していたりと長らくサポート的な活動を続けていたセイント・ヴィンセントことアニー・クラーク。それがいまじゃテイラー・スウィフトにも負けないほどのVIP的な華やかさ、輝きを放つに至り、女性が魅惑的になっていく様子を目の当たりにするほど嬉しいものはないなあと喜びを隠しきれない私です。

そのセイント・ヴィンセントの新作を含めた近年の作品を手掛けているジョン・コングルトンというプロデューサーが、実はいま多くの現場で仕事をこなしている売れっ子の一人であることをご存知でしょうか。ジョンの名前が広く知られるきっかけになったのは、デヴィッド・バーンとの共作『Love This Giant』を含めたセイント・ヴィンセントの一連の作品だと思いますが、ミックスの仕事を含めるとここ数年だけで、オッカーヴィル・リヴァー、ビル・キャラハン(スモッグ)、ティム・ケイシャー(カーシヴ)、ウォークメン、アンナ・カルヴィ、ポリフォニック・スプリー、マウンテン・ゴーツなどなど大変多くの録音現場に関わっています。ちょっと一時期のマイク・モーギス(ブライト・アイズ、モンスターズ・オブ・フォーク他)を思い出させるほどの充実した仕事ぶりです。

ジョン・コングルトンは、もともとは90年代後半にテキサスで結成されたペーパー・チェイスというバンドの一員であり、現在もナイティ・ナイトというユニットで活動しているアーティスト。強い音圧でメランコリックな曲を感情豊かに表現するスタイルが魅力の、ミュージシャンシップの高い人なのですが、そんな音圧の高い音作りを得意とするジョンがセイント・ヴィンセントと組んだことはある意味革命的な出来事だったという気がします。なぜなら、セイント・ヴィンセントはファズやリングモジュレーターのようなエフェクターを多用して演奏するギター女子だから。エレガントなヴォーカル・スタイルとは一見ミスマッチな硬質なギター・プレイを活かせるサウンド・プロダクションが、彼女にはきっと必要だったからです。

結果、カントリーやフォーク指向も根っこに持つセイント・ヴィンセントのサウンドにパキッとした音の輪郭を与えることに成功。コンプかけまくりの、言わば〈張った〉音に仕立てた背景にはこのジョンの仕事があると言っていいと思います。ジョンが絡んだ他アーティストの作品にも同様の音質を感じさせるものが多く、言ってみれば彼こそが、インディー作品ながらメジャー感ある音作りが増えてきた昨今の傾向を支えている、影の重要人物。とりわけ女性アーティストについては、先頃ようやく日本盤がリリースされたロードやクァドロン、スカイ・フェレイラのように強度あるサウンド・プロダクションのものが高い評価を得る時代です。ジョンが引っ張りだこになって当然かもしれません。

そんなジョン・コングルトンが、セイント・ヴィンセントやアンナ・カルヴィらに続いて手掛けた女性アーティストがエンジェル・オルセンというのには、思わず拍手を送りたくなりました。彼女はシカゴに拠点を置くシンガー・ソングライター。これまでボニー“プリンス”ビリーの『The Wonder Show Of The World』(カイロ・ギャングとのコラボ作)や『Wolfroy Goes To Town』などに参加、近年は自身でもカセットやEP、あるいはアルバム『Half Way Home』といったソロ・アイテムを発表するようになっていました。それらの作品から受けた印象は、ジョアンナ・ニューサムやローラ・ギブソン、サマラ・ルベルスキらに続くフォーキーな美人アーティストという感じだったのですが、新作『Burn Your Fire For No Witness』ではガラリとイメージ・チェンジ。それまですっぴんにストレートヘアのナチュラル・ガールが、メイクもヘアもバッチリ、ドレスアップして人前に現れた時のようなドキドキ感を伝えてくれているから驚きです。自然な風合いの音作りはかなり後退し、ヴォーカルにさえコンプレッサーを強くかけたゴリゴリの“Hi-Five”などが彼女の新境地を伝えています。

プロデューサーのマジックで見事少女から大人の女性へと変身したエンジェル・オルセン。新たなポップ・レディーの誕生に心が激しく躍る今日この頃です。



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