私の「2000年代ロック名盤」(渋谷店)
2000年代を振り返ってみると、他の年代に比べロックンロールリバイバルに始まり、ディスコパンク、ポストパンクリバイバル、ここでは紹介してないけど、ブルックリンシーンの躍進、ニューレイヴだったり多くのムーブメントが起きていたな~と改めて。当時高校生ぐらい~タワレコ入社ぐらいで音楽に溺れていた青春時代なので、久々に聴いたりして、選盤していて楽しかったです。でも当時はUKロックだよな~なんて思っていたけど今でも好きな盤を選ぶとUKは1アーティストでしかもUKっぽくないアントニーだけなのは以外。しかも10中8がNY…。
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渋谷店/武田 晃
ポストパンクとフランス映画とラーメン二郎ともつ焼きが好き。最近の趣味は筋トレとヘルシー料理。
The National『Boxer(金曜販売開始商品)』
今となってはようやく日本での人気も出てきた、NYはブルックリンの実力派バンドの4作目。前作『Alligator』も名盤だけど、個人的には入りも最初だったし、何度聴いたかわからない今作。この時期のブルックリン勢では珍しくジョイディヴィジョン等のポストパンクからの影響を受けて、それを見事にドラマティックなメロディとアレンジにのせて消化。当時は日本人受けしないと思われていたダンディなバリトンヴォイスも個人的には好きで、オリジナル・ポストパンクを漁っていた当時、初めてこの声を聴いたとき衝撃を受けたもの。最近リリースされた完全再現ライブ盤もオススメ。
Antony & The Johnsons『クライング・ライト』
故ルー・リードが称賛を送り、ブレイクを果たしたUK出身のシンガーによる3作目。なんといってもその声。前途に紹介したヘラクレス・アンド・ラヴ・アフェア でも見せた声の魅力は、自身が中心となるアントニー&ザ・ジョンソンズとなると、ジャズやクラシックを消化したシンプルなバンドサウンドとなり、より全面に。そのまさに妖艶と呼ぶに相応しい唯一無二の美しい歌声は何時聴いても鳥肌もの。彼が敬愛する日本の舞踏家、大野一雄氏のジャケも素晴らしい。
TV On The Radio『Dear Science,』
ブルックリン勢の勢いが止まることを知らなかった00年代後半。そのブルックリンシーンでも特異な存在だった天才プロデューサー、デヴィット・シーテックが率いた異色の集団、通称“黒いレディオヘッド”。とはいえ彼らの音楽性はレディオヘッドに近いのではなく、その他に類を見ない革新的なオリジナリティがあったから。僕個人当時はほんとどブラックミュージックを聴いてなかったし、今では当たり前のようにロックやソウルのジャンルの壁はないけど、彼らはいち早くポストパンク、シューゲイザー等のロックの中に黒人ならではの感性でソウルを溶かしていた。驚くような衝撃もあれば感動的なメロディもある。当時はよく聴いていたけど、久々に聴いた“FAMILY TREE”に思わず涙...。
Hercules And Love Affair『Hercules And Love Affair (EU)(EU)』
NYのディスコカルチャーより現れたユニットのデビュー作。なんといってもアントニー&ザ・ジョンソンズのアントニー・ヘガティ(現アノーニ)を迎えたウルトラスーパーキラーチューン“BLIND”の破壊力は凄まじく、当時は本当にこれで良く踊ったもの。結果的にこの一枚以外はパッとした作品は無いけど、今作と“BLIND”1曲はディスコクラシックとして、これからも忘れてはならない名盤。というかこんな曲流れたら、いつの時代でも誰でも踊ります。あ、ロック編での選出ですが、ロックファンにも聴いて欲しいということで。
LCD Soundsystem『Sound Of Silver(EU)』
僕の中では史上最高のダンスアクト。00年代初頭から始まったポストパンク・リバイバル、そしてディスコパンクムーヴメントの最重要人物であるジェームス・マーフィーによる一大プロジェクト。ディスコとパンクを合わせたのであればトーキング・ヘッズ等、元々地元NYには多くのバンドがいたけど、彼はDJ、レーベルオーナーとしてそれらを自ら再評価し、アーティストとして自らアップデートさせ現代版ディスコパンクを作り上げた。ポストパンクのヒリヒリとして質感、ディスコの陽気な空気感に当時は衝撃を受けて、来日があれば必ずライブに行ったもの。(復活してくれて、本当に良かった!)何よりオリジナルのポストパンク、ニューウェーヴにどっぷりハマったのも、このバンドがあったから。
Sparklehorse『Dreamt For Light Years In The Belly Of A Mountain』
2010年自ら命を絶ったUSインディシーンの秘宝マーク・リンカスの実質一人ユニット。後に連名の作品をリリースすることなるデンジャー・マウスをプロデュースに迎え、トム・ウェイツ等の豪華アーティストも参加した4作目。インディ好きのなかでカルト的な人気を誇ることからもわかる通り、彼の音楽はエリオット・スミスやジェフ・バックリーのように暗く、胸を締め付ける悲しさに溢れている。でも僕が好きなのは、ジャケのイメージそのままの、彼が作り上げるファンタジー映画のように不思議で魅力的な世界があるから。さほどメディアでの評価は高くないですが、僕の中では本当は誰にも教えたくない、まさに宝物のような一枚。00年代でこのアルバムが一番好きです。
Cat Power『The Greatest』
90年代USオルタナシーンより現れたSSWの7作目。これまでの作品とは違い、サザンソウルシーンの凄腕セッションミュージシャンをバックにつけた異色作。まさにキャット・パワー流のソウルアルバムだけど、単なるソウルではなく彼女のルーツであるフォーク、カントリー、ブルースの要素もあるし、なんといっても、まったりとした“インディロック”らしさもあるのが面白い。タイトル曲“THE GREATEST”はそれを象徴する、個人的に00年代5本の指に入る名曲。キャット・パワーの最新作に参加してるラナ・デル・レイ等昨今の女性SSWへの影響も絶大。
Liars『Drums Not Dead [CD+DVD](+DV/ED)』
NYディスコパンクのシーンから現れ、他のバンドがメインストリームへ向かったのに対し、地下深くを掘り続けた真の変態集団。NY地下では刺激が物足りなかったのかベルリンに拠点を移し、その変態性が妖しく開花してしまった3作目。そのタイトル通り(当時の邦題は『果てしなきドラム』)永遠に耳に纏わりつく狂人的ドラムをベースに、呪文みたいなヴォーカル、ノイズとも違う不協和音的上物が産む不安定なグルーヴはこの世で鳴っているとは到底思えない恐怖。やめてくれ~って思わず叫びたくなるほどなのに、何故か癖になる危険な一枚。
Yeah Yeah Yeahs『Fever to Tell [ECD] [ECD](UK/ED/+1)』
NYロックンロールリバイバルの中心。17年前登場の衝撃は今でも鮮明に覚えてるし、聴きまくった私的な青春盤。当時珍しいように感じたド派手なジャケに一切の遜色はなく、インパクトの塊みたいなクレイジーなロックンロールは本当に目の覚めるような衝撃。久々に聴いたけどオープニングの“RICH”からぶっ飛ばしまくってて最高。昨今クールな新人バンドが多く登場しているけど、彼らほど尖っていてクールなバンドはこの先も現れないかも。再結成してライブが観たいバンドNo1です。
Interpol『Turn On The Bright Lights * 』
ザ・ストロークス、ヤー・ヤー・ヤーズ等と共にNYを中心起こった00年代ロックンロールリバイバルより現れ、後のポストパンクリバイバルへと繋がる重要バンドのデビュー作。ジョイ・ディヴィジョンの再来とも評され、特にポール・バンクスの唄声がイアン・カーティスと比較されたりもしたけど、このバンドの凄さはそのスケールの大きい哀愁を帯びたメロディと妖艶な美しさ。名曲“OBSTACLE 1”を筆頭にそのスケールの大きさは、到底インディレーベル(リリースはMATADOR)からデビューの新人とは思えない。隠れた名バラード“NYC”なんて結成20年ぐらいは経っていそうな貫禄。
タグ : タワレコ名盤セレクション
掲載: 2020年05月27日 00:00