私の「はじめてのAOR オススメ10選」(札幌ピヴォ店)
AORとは「Adult Oriented Rock」の略で、ざっくり言うと"大人向けのロック"という感じ。いわゆる激しいロックとは一味違う、「アーバン(都会的)」で「メロウ(落ち着いた)」な音楽たち。ドライブや、きらめく夜のビル街、真夏の海……なんて風景を想起させる、洗練されたサウンドを指す事が多いです。 AORの最盛期は1980年代でしたが、いま再ブームが到来しています。近年のヴェイパーウェイヴやフューチャーファンク(※80年代のポップスやフュージョン等をサンプリングして作られた新しい音楽ジャンル)の台頭を機に、その"元ネタ"として使用されたシティポップやAORに注目が集まり始めたのがきっかけとされています。 ここでは「これからAORを聴いてみよう」というリスナーへの"最初の1枚"となりうる圧倒的名盤をレコメンド。全盛期の傑作から、レジェンド達のDNAを継承した現代の最新作までを織り交ぜてチョイスしました。 胸躍るAORワールドへの入口となれば幸いです。
Selected by
札幌ピヴォ店/やまもん
札幌ピヴォ店の洋楽担当です!おにぎりとわくわくする音楽が大好きです。
Young Gun Silver Fox『ウェスト・エンド・コースト』
■YOUNG GUN SILVER FOX / WEST END COAST (2015) 【オススメ曲:[1]You Can Feel It, [3]Better, [5]See Me Slumber】 アルバム名とジャケットが示すとおり、一度再生すればそこは西海岸! バンドを象徴するのはアンディ・プラッツ(Vo,Key)の輝かしいヴォーカルと、壮大で美しいコーラス、温かきフェンダーローズの音色。いわゆるAORやシティ・ポップといったジャンルを通過してこなかった、幅広い音楽リスナーにも等しく美しい情景を見せてくれる、始めの1枚にも相応しい傑作です。
Airplay『ロマンティック <期間生産限定盤>(LTD/RM)』
■Airplay / Airplay (1980) 【オススメ曲:[4]Nothin' You Can Do About It】 「AORの教科書」と言うべき大名盤。今や大御所プロデューサーであるデヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンによるユニットの唯一作ですが、類稀な音楽センスと技術による熱量溢れるサウンドは当時の音楽シーンを圧倒。多数のフォロワーを生み出し、同じくスーパーバンドであるTOTOと共に「TOTO/Airplay系」と称される音楽がシーンを席巻しました。 幕開けを飾るハイ・ボルテージな[1]、パンチラインの宝石箱[2]、アース・ウィンド・アンド・ファイアーへの提供曲のセルフカヴァー[10]などオススメ満載ですが、まず聴くべきは[4]。ご両人の美味しすぎるソロに、切り込んでくるホーン・セクション、グレイドンのエネルギッシュなヴォーカル、どこを取っても熱いキラーチューン!
Ed Motta『AOR(+BT)』
■Ed Motta / AOR (2013) 【オススメ曲:[4]Dondi, [5]Smile, [6]1978(Leave The Radio On)】 現代に「AORとは?」を分かりやすく提示してみせた重要作。 元々"超"が付くほどのAORマニアだったブラジルのミュージシャン、エヂ・モッタ。それまでソウル〜ファンク〜ディスコ系で活動していた彼が、満を持して愛を炸裂させたのがこの作品。自身が敬愛する70〜80年代のAOR黄金期のエッセンスを、ソウルフルな持ち味でよりポピュラーに昇華させたのが素晴らしい。ディープなAORファンはニヤリとさせられるし、ライトなリスナーにも「何だか素敵なサウンド。これがAORなんだ!」と学ばせてくれるような、懐の深い1枚。オススメはDavid T.Walkerのスウィートなギターが光る[4]。
Tomi Malm『ウォーキン・オン・エアー(+2)』
■Tomi Malm / Walkin' On Air (2018) 【オススメ曲:[2]Favor, [4]Walkin' On Air】 以前、タイトル曲である[4]"Walkin' On Air"を店頭でストアプレイしていた際に、小さな女の子から「今流れているのはどのCDですか?」とお問い合わせがありました。普段客層のほとんどが中高年であるAOR・フュージョンコーナーでのその出来事は衝撃的でしたが、と同時に、ジャンルの属性に囚われないこの作品の多面的な魅力に改めて驚嘆したものです。 北欧出身のキーボディストであり、デヴィッド・フォスターのトリビュート盤の仕切り役を務めた経歴もある若き才人トミ・マルムの初リーダー作で、界隈の大御所ミュージシャンも多数参加。ただ、そんな見出しを知らずとも、上述の彼女のように手放しに感動してしまうこと必至の圧倒的名盤です。
Bobby Caldwell『イヴニング・スキャンダル(+BT)』
■Bobby Caldwell / Bobby Caldwell (1978) 【オススメ曲:[6]What You Won't Do For Love, [9]Down for the Third Time】 "キング・オブ・AOR”の異名を持つ名シンガー、ボビー・コールドウェルのデビューアルバムにして代表作。特に[6]"What You Won't Do For Love"(邦題:風のシルエット)は多くのカヴァーやサンプリングネタとして、彼を知らずとも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。 彼について必ず語られる甘いメロディーやグルーヴィーさももちろん素晴らしいのですが、抜粋されてワンループネタとして使用されてさえも魅力的な、万人に訴えられるハイセンスなトラックはまさに中毒もの。クラブやHIP HOPリスナー、若い音楽リスナーにこそ刺さる、ジャンルや世代を超えた名盤といってよいと思います。
Larry Lee『ロンリー・フリーウェイ <期間生産限定盤>(LTD)』
■Larry Lee / Marooned (1982) 【オススメ曲:[2]Don't Talk】 AORを体現する1曲といっても過言ではない名曲[2]"Don't Talk"。この曲との出会いは、学生時代にレンタルショップで何とはなしに手にした洋楽のコンピレーションCDでした。「朝に聴きたいさわやかな洋楽」という切り口で新旧ごった煮の楽曲が集められたそのCDの中で、"Don't Talk"は圧倒的な存在感を放っていました。 当時はAORという言葉すら知らなかった私が、この曲を聴いた瞬間、「雲一つない青空」や「夏の海岸線」なんていう、まさにこのジャケット写真のような光景をリアルに想像したのです。
The Doobie Brothers『Minute by Minute』
■The Doobie Brothers / Minite By Minite (1978) 【オススメ曲:[1]Here To Love You, [2]What a Fool Believes】 サンダーキャットの代表曲“Show You The Way”でマイケル・マクドナルドを知った方も多いのではないでしょうか。 かつてはスティーリー・ダンにも参加したシンガーソングライターである彼が、その才能を大きく開花させたのがこの作品。多数のカバーも生んだ[2"]What a Fool Believes"に代表される、軽快で愛らしいメロディーと、スモーキーで温もりあるマクドナルドのヴォーカルは唯一無二。全米No.1やグラミー賞も獲得した、音楽史に残る名盤です。
Bill Champlin『独身貴族 <期間生産限定盤>(LTD)』
■Bill Champlin / Single (1978) 【オススメ曲:[1]What Good Is Love, [6]Love Is Forever】 AOR界を代表する"職人"たちが集結して作り上げた、極上の一枚! 数多のAOR名盤にもコーラス参加しているヴォーカリスト、ビル・チャンプリンを中心に、プロデューサーにはデヴィッド・フォスター、バンドにはTOTOの面々、ジェイ・グレイドン(g)、レイ・パーカーJr.(g)、マイケル・マクドナルド(key)など凄腕メンバーが勢ぞろい。彼らによるサウンドの強力さが、楽曲の説得力を大いにサポートしています。
Tim Cashion『ファインド・アス・オン・ザ・ダイアル』
■Tim Cashion / Find Us On The Dial (2015) 【オススメ曲:[10]None Of A Kind, [14]Love Again】 大御所ロックバンド・Grand Funk Railroadの現キーボディストであるベテラン、ティム・キャッションが、自らのウェストコースト愛をここぞとばかりに体現したソロアルバム。 何かとテクニックの文脈で語られる事の多いAOR作品において、この作品に関しては歌と楽曲が突出して素晴らしい。アンブロージアのDavid Packを彷彿とさせる切なげで甘酸っぱいヴォーカルと、胸を打つ素晴らしいメロディ、そして美しいコーラスワーク、全てが神懸かり的! 無人島へ10枚だけ持っていけるとしたら、間違いなくこのアルバムを選びます。
Ole Borud『アウトサイド・ザ・リミット(+1)』
■Ole Borud / Outside The Limit (2019) 【オススメ曲:[1]Put My Money, [2]Always Love You】 「元気が出るAOR」代表を選ぶとしたら、間違いなくオーレ・ブールード! 彼について語ろうとすると、楽器も歌もめちゃくちゃ上手いとか、往年のAOR~フュージョンへのリスペクトがすごいとか、芸達者な彼なのでいくらでも並べられるのですが、ひとつ自信をもって言えるのが「とにかくエネルギッシュ!」ということ。全然論理的ではありませんが、彼の作品に込められた愛情とパワーは現代AOR界随一と言ってもよい。その滾るエナジーを圧倒的演奏力でもって後押ししている、そんなイメージです。 これまでに発売された作品すべてが名作ですが、中でも圧倒的にパワフルなのが最新作「アウトサイド・ザ・リミット」。1曲目から仰け反るほど元気!
タグ : タワレコ名盤セレクション
掲載: 2020年06月03日 00:00