私の「BACK STREET 70's SOUL!!!」(難波店)
激動を経て70年代に託した希望こそが音楽。 社会の現実はまだまだ厳しかったが、血の通った意思が溢れるSOULシーンのゴールデンエイジ=70年代に、華々しく活躍したスターの名盤は数多ある。例えば、EARTH,WIND&FIRE、JB、SLY&THE FAMILY STONE、STEVIE WONDER、MARVIN GAYE、ARETHA FRANKLIN、DONNY HATHAWAY…。しかしそのちょっと裏筋を行けば、スターとまではいかないが熱く輝く名盤がまだまだ沢山あるのです!そんな陰日向に咲いた70年代SOULの名盤をご紹介!
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難波店/さつま いもこ
主食はブタメン。最近の楽しみは、アーティストの絵を描くこと。いつかは個展。
Alice Clark『アリス・クラーク <期間限定価格盤>』
たった一枚残したアルバム…、経歴ほぼ不明…そんなミステリアスな出自にも大いに惹かれるが、何よりその歌声。ゴスペルで鍛えられた強靭な歌声なんだけれど、そのアクは全く感じさせず、 ニューソウルの都会的で洗練されたサウンドを纏ってスムースに華開く。 90年代のレア・グルーヴ・ムーヴメント時に、アシッド・ジャズ系のコンピに収録されてから、「誰なんだこれはっ!」とシーンがザワつき一気に話題に。長い間、演奏メンバーは不明で、著名アーティストの名前が都市伝説の様に飛び交っていたが、後にバーナード・パーディーがインタビューで、自身がドラム、ボブ・ブッシュネルがベースで参加していたと語っていた。やっぱりね。
Satisfaction Unlimited『シンク・オブ・ザ・チルドレン <期間限定価格盤>』
”Hot Waxの隠し玉”なんてよく評されますが、メロウ~サイケ~ファンク、走攻守三拍子揃った切り札的なデトロイト・ソウル。MotownのプロデュースチームH=D=HがInvictus/Hot Waxを創ってからは、アーティストの特性に合わせた曲作りをしたという。それだけにこの作品にもアーティスト由来の滋味が深い。エレピが清々しい①「Bright City Lights」、メロウな人気曲④「Let´s Change The Subject」、美ピアノ×ゴスペルが慈しみ溢れる名曲⑤「Think Of The Children」。柔軟で溌溂とした人間味に惚れてしまう。音楽で表現する理想の人間像ってこんなかも。
Gladys Knight & The Pips『さよならは悲しい言葉 <生産限定盤>』
グラディス・ナイトの兄弟、親族からなるファミリー・グループ。グループ一世一代の名唱と言われる①がチャート2位まで昇りつめたMotown傘下Soulでの最終作。スモーキー・ロビンソンに認められて当時12才でデビューした程の才能の持ち主だから、ドラマチックなグラディスの歌唱表現は非の打ち所がないし、一流のソングライター陣も参加している。スターには間違いないのだけれど、切々と歌い上げる姿はともすれば地味。しかし裏を返せば大人。その堅実健全さにこそ、やっぱり心惹かれ掻き立てられるものがあるのですよ。クラスに一人はいたようなタイプですね。
Mike James Kirkland『Hang On In There』
マーヴィン・ゲイ「What's Going On」の影響力が産み落とした、ニュー・ソウルの裏名盤。作風や、歌唱方法、曲間を排した編集の仕方までマーヴィン・マナー。やや強引な所もあるし、リアルタイムでは二番煎じ的に捉えられてしまいがち(実際かなり似てる曲もある…)だったようだが、それを差し引いたとしても充分な佳曲揃い。さらにジェイムス・ギャドソン、アル・マッケイら西海岸のバンド陣によるグルーヴは如何にもニュー・ソウル的で痺れる。漂う浮遊感に対してのひたすらグルーヴィーな重心の低さが魅力的。今はきっとこのアルバム本来の素晴らしさを邪推なしに評価されるはず。
Milton Wright『Friends and Buddies <タワーレコード限定>』
マイアミ・ソウルの裏名盤にして、レア・グルーヴ・クラシック!ティミー・トーマス、ラティモアらのTKオールスターズが参加。すでに時の人となっていた妹ベディ・ライトに加え、フィリップとジャネットも参加と家族総力体制でバックアップ。ミルトンのバリトン・ヴォイスが、マイアミらしい軽快な曲群の手綱を握り、ビートとシンセがサウンドを快楽へと導く様は、来るべきディスコの足音を感じさせる。こんなに内容が素晴らしいのにも関わらず、当時のチャートでは振るわなかったそう。当時のシーンの流行からはどっちつかずと捉えられたかもしれないが、現代の多様性を背景にして聴くと如何にもしっくり馴染む。ドライブにもおすすめ出来る解放感。
Terry Huff And Special Delivery『ザ・ロンリー・ワン <初回限定生産スペシャルプライス盤>(LTD)』
ハフ…ハフ…ハフ…。鼻息も荒くなっちゃう位のスウィート・ソウル。“甘茶ソウル”つったらコレです!切なくシャウトするファルセットの丸さ(マイルドさ)と、ハスキーな地声との昇降こそが彼の表現力の真骨頂。⑦「I Destroyed Your Love - Part 1 」がハイライト。サワサワと琴線をなでるファルセットに続く間奏の語りでダメ押しスウィーツ。我が強いテリーは私生活でも波乱であったが、制作途中からメンバーと仲違いしていた為、完成した頃にはもう解散。その為プロモーションもろくにしてもらえず、当時の売れ行きも芳しくなかったそう。それでも良い作品っていうのはこうして受け継がれるもの。音楽って素敵やん。
The True Reflection『ホエア・アイム・カミング・フロム(LTD/RM)』
ワシントンDCの4人組が残したたった1枚の作品が、70年代"裏名盤"になるっていうドラマチックさもさながら、やはり実力はハイレベル。中でもグレン・レオナードは、解散後Temptationsのメンバーに。さらに当時を代表する音を作り出していたフィリーの本拠地シグマ・サウンド・スタジオで録音!プロデュースはModulations!唯一のフィリー・ダンサー⑦ がアッパーで印象的に引っ張るが、②「That Was Yesterday」⑤「It Really Hurts」⑥「Helpless Man」などのバラードが、裏名盤と呼ばれる所以をより裏付ける。当時のスターアーティスト達の作品と聴き比べても全く遜色はない。
Howard Tate『ハワード・テイト(LTD/RM)』
NYディープ・ソウルの中でも重要人物の一人。67年「Get It While You Can」収録曲を、後にジャニス・ジョップリンやジミ・ヘンドリックスらがそれぞれカバーしたことでも知られています。ジェリー・ラゴヴォイがプロデュース。⑤の邦題が「北国の少女」なのはさておき、ハイトーンなテナーはダスティーな熱量が痛快。バーナード・パーディー、エリック・ゲイル、リチャード・ティーらの演奏も実にシャープで、ファンクやサザン・ソウル、更にはスワンプまで漂わせる。その後消息を絶つが、2003年に復活作「Rediscovered」をリリースする。そのCD帯のコメントにはエルヴィス・コステロ!玄人からのリスペクトが絶大!
Clarence Reid『ランニング・ウォーター <完全生産限定盤>(LTD/RM)』
Betty Wrightの名曲「Clean Up Woman」のソングライターでありながら、正体を隠した(つもりの)謎の覆面エロ男爵Blowflyとしての顔も持つ。一癖も二癖もあるこの男が、実はマイアミ・ソウルのキーマン。本名クラレンス・リードでの3作目は、SSWとしての才能を前面に打ち出したニュー・ソウル。例えるなら、いつも笑顔の○家パー子が不意に見せる真顔。その哀愁こそが、マイアミ・ソウルの魅力なのだ。サンプリング・ソースとしても有名な①から始まり、ジャクソン5かってくらいポップな⑦、リトル・ビーヴァーがアレンジで参加⑩など、ストリングスの塩梅も抜群。マイアミの穏やかさを存分に吸収している。
George Jackson『In Memphis 1972 - 77(UK)』
ジェイムズ・カー、スペンサー・ウィギンス、キャンディ・ステイトン、クラレンス・カーター、ウィルソン・ピケットなど数多くの偉大なアーティストへのライティングを残してきたサザン・ソウルの名ソングライター。この自身の作品の曲にしても、卓越したポップなメロディ・センスは、全曲他のどんなアーティストに出しても名曲が誕生するはず。しかし、自身がシンガーとしてナヨっとしながらも流麗に歌うと、それはそれで優しくフォーキーな魅力を醸す。勿論胸ポケットには溢れる熱を潜ませながら。シャウティング・スタイルだけがサザン・ソウルじゃない事に気付かされます。今作は、未発表曲を含むメンフィス期の活動をコンパイル。
タグ : タワレコ名盤セレクション
掲載: 2020年06月03日 00:00