インディー・ポップ・レジェンド、BMXバンディッツ新作
『イン・スペース』と題された本作に収められたのは、デビュー当初から失う事の無い心に残るメロディの数々、タイトル通りの程よくスペーシーなフィーリング、いつも変わる事の無い優しさ一杯の歌心。とにかく感動です。2007年の前作『ビー・スティングス』から約5年の歳月をかけて吹き込まれた本作は、バンドのオリジナルメンバーであるJim McCullochや、Sean Dicksonの復活に加え、盟友ノーマン・ブレイク(ティーンエイジ・ファンクラブ)に、アルゼンチンのCineplexx、日本のPlectrumが参加と充実の仕上がり。何より、アルバム自体が、過去と未来と宇宙への旅路をしっかりと描いた、究極のコンセプト・ポップ・アルバムに仕上がっています。
アルバムのどこを聴いても飛び出す良質のメロディが彼らの真骨頂である事は間違いないのですが、旅の始まりを告げるイントロ「01.In Space」のワクワク感がアルバムへの期待を煽ります。まるで初期のハイ・ラマズを思わせるほのぼのポップ「02.Still (With Plectrum)」、ノーザンソウル風味のベースラインが格好良い「03.Beautiful Friend」、らしさ全開のギターポップ「06.Listen To Some Music」、「11.Fireworks」に、穏やかな弦が心地良い愛らしいワルツの「13.And While We’re Dancing」など、ただポップなだけではなく、ヴァラエティも豊か。ただ、何と言っても注目したいのは女性Vo. レイチェル・アリソンの歌声が絶品のメロウな楽曲達。ダグラスとのデュエットで聴かせる、Cineplexxのダンサブルなアレンジの心地良さと程よく高揚するメロディが絶品の「07.Elegant Love」に、その哀愁感がひたすら涙を誘う「05.Like The Morning Sun」でしょう。特に後者の泣きっぷり、程よいソウル感には驚かされます…。そしてハイライトと言うべき、往年のバート・バカラックなどのビッグネームなどを思わせるような極上のポップソング「12.All Around The World」。BMXバンディッツにしか鳴らす事の出来ない、どこか頼りなくて、でも心にキュッと響くような感動の名曲です。
結成から早くも26年。そのメロディセンスの良さは変わらず、むしろより進化していて、そのサウンドはしっかりとしたバンドで鳴らしつつも、どこか気の抜けた愛らしさを失う事が無い。そんな、ありそうで、実際には絶対に出来ないようなミラクルなバランス感覚を持ち合わせたバンドって、そんなにいないですよね?でもね、ここにいるんですよ…。
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掲載: 2012年12月06日 15:47