グラスゴーの至宝、パステルズによる奇跡の新作
『スロウ・サミット』には、『イルミネーション』以降のパステルズの歩みが自然な形で反映され、彼らの揺るぎなくも柔軟な音楽的ビジョンが明快に示されている。パステルズをパステルズたらしめる全ての要素がこれまで以上に絶妙なバランスで配置されていると言ってもいいかもしれない。パステルズ、グラスゴー、インディー、アノラックといったキーワードから、使い古しのギター・ポップを思い浮かべて敬遠してしまう人がいたら、それはあまりにも勿体ない。見かけ倒しのスタイルや実験性とは無縁のところで、ゆっくりと、しかし着実にその感性を研ぎ澄ましてきたパステルズの現在は、どこまでも優しく穏やかでありながら、無限の奥行きを感じさせる。
本作の録音はグラスゴーで、ミックスはシカゴで、いずれもジョン・マッケンタイア(トータス/ザ・シー・アンド・ケイク)を迎えて行われ、プロデュースもパステルズとマッケンタイアの共同名義となっている。
録音メンバーは、スティーヴン・パステルとカトリーナ・ミッチェルをはじめ、盟友ティーンエイジ・ファンクラブのジェラルド・ラブ、インターナショナル・エアポートのトム・クロスリー、アリソン・ミッチェル、ジョン・ホガーティという6 人のコアメンバーが中心になっているが、プロデューサーのマッケンタイアが5 曲でドラムを担当している他、ノーマン・ブレイク(ティーンエイジ・ファンクラブ)やオリジナル・メンバーのアギーことアナベル・ライト、トゥ・ロココ・ロットのメンバーの2 人(ステファン・シュナイダーとロナルド・リポック)、ビル・ウェルズ、テニスコーツ、青柳拓次らもゲスト参加。さらに、同郷の著名な映画音楽作曲家、クレイグ・アームストロングが1 曲(「Kicking Leaves」)でストリング・アレンジを手がけている。アギーが手がけたジャケット挿画もいつもながら素晴らしい。
日本盤のみのボーナストラックとして、2004 年にカトリーナがカジヒデキに歌詞提供してヴォーカリストとしても客演した名曲「Illuminum Song」のパステルズ・ヴァージョン、さらに未発表の新曲「Boats」の2曲を収録。
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掲載: 2013年04月22日 20:41