ドリーム・ポップ・ワンダーキッド、ブラックバード・ブラックバード最高傑作
ブラックバード・ブラックバードはサンフランシスコを拠点に活動するMikey Maramagによるソロ・プロジェクト。2010年にデジタル・リリースし、2011年にCD化されたファースト・フル・アルバム『Summer Heart』は当時のムーヴメントであったチルウェイヴの潮流に乗って注目を集めロングセラーとなり、現在もチルウェイヴのクラシック作として評価を不動のものにしている。2012年にリリースしたEP、『Boracay Planet』では生演奏の比重を高め肉感的なダイナミズムが強まり、メロと歌の強度がぐっと増した力作であった。
そしていよいよリリースされるのが、このセカンド・フル・アルバム『Tangerine Sky』である。元々ロックからクラブ・ミュージックまで雑食にあらゆる音楽を聴いている彼。常に自身のヒストリーとトレンドを巧みに吸収・消化し作品へ 反映してきた。
先行シングルとなった「There Is Nowhere」ではヒプノティックなムードの中、幽玄的なヴォーカルが漂う魅惑のR&Bを披露し、新機軸を見せていたが、本作では成長したMikeyの“今”が見事に詰め込まれた、現時点での最高傑作と言える完成度のフューチャリスティック・シンセ・ポップに仕上がってる。もちろん巧みなソング・ライティング能力に裏打ちされたポップ且つドリーミーなテイストや、煌めきや揺らめきに彩られた音色は通底しているが、ヒップホップ /R&B、スペースエイジ・フォーク、瞑想的なグルーヴのテクノ、ハウス、ベース・ミュージックまでが巧みに盛り込まれ、トラックによって目まぐるしく展開していく。
もはやチルウェイヴのレッテルから完全に脱却し、見事にオリジナルの世界観を築き上げた。ジャンルを股にかけ、あらゆるリスナーに アプローチできる刺激的な快作だ。
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掲載: 2014年05月21日 10:18