注目アイテム詳細

デヴィン・タウンゼンド、新作をダブル・アルバムでリリース

Devin Townsend

 

カナダの奇才、デヴィン・タウンゼンドの新作は『Z²(Zスクエアード)』と銘打たれた変則的なダブル・アルバムだ。そのうちDISC-1はデヴィン・タウンゼンド・プロジェクト名義での『SKY BLUE(スカイ・ブルー)』、そしてDISC-2はジルトイド(Ziltoid) という名義による『DARK MATTERS(ダーク・マターズ)』という成り立ちをしている。

今作『Z²(Zスクエアード)』を解くうえで重要なヒントとなるのは、2007年にリリースされた『ZILTOID THE OMNISCIENT』ということになるだろう。同作はいわゆるソロ名義のアルバムとしては今作のひとつ前の作品にあたり、その表題が示すように、全知全能を自称するジルトイドなる架空のキャラクターを主人公とする壮大な物語に仕上げられている。

前述の通り、今回の新作のうちDISC-2はジルトイドという名義で制作されており、あたかも架空の存在が生命を持ち始めたかのようなニュアンスが漂ってくるが、ジルトイドが“音楽的にほぼ全知全能”というべきデヴィンとイコールで結ばれる存在であることは疑うまでもない。デヴィンは、熱心なファンの間でも名盤との声が多い『ZILTOID THE OMNISCIENT』を振り返りながら「今となっては美化されたデモのように聴こえる」とまで語っている。当然ながら、彼にその言葉を吐かせたのは『Z²(Zスクエアード)』の完成を経た現在の達成感と自信ということになるだろう。

しかも7年という時間経過のうちにテクノロジーはさらに進化し、デヴィンの音楽的視野もまた広がりを増している。今作は、いわば彼にとっての2014年なりの制作フォーマットに則って体現された『ZILTOID THE OMNISCIENT』の続編というべきものであり、同時に現在の彼自身の欲求を満たすものなのだ。いわゆるヘヴィ・ロックの領域にとどまることなく、アヴァンギャルドで、シネマティックで、地獄のようなヘヴィネスと天国のようなメロディの響きを併せ持つデヴィン・タウンゼンドの音楽的特性は、この2枚組作品に過度なほどの密度で凝縮されている。架空のサウンドトラックという形容も可能だろう。2,000人ものファンの歌声をオンラインで集めながら作成されたという“ファン・クワイア”をフィーチュアした楽曲の存在にも注目したい。

さらに本作は日本限定のスペシャル仕様として、2013年10月19日にさいたまスーパーアリーナで開催された「ラウドパーク13」にデヴィン・タウンゼンド・プロジェクトとして出演したライヴの模様を収録したDVDを追加!デヴィン・タウンゼンドの最新パフォーマンスを堪能できるとともに当日参加したファンにとっては貴重なメモリアル作品と言えるだろう。

もちろん、謎はまだまだたくさん残されているが、それはこれから徐々に解き明かされることになるに違いない。なお、本作と同時に、彼の新プロジェクトであるCASUALITIES OF COOL(カジュアリティーズ・オブ・クール)のアルバムも発売を迎えることになっている。ますます全知全能ぶりに磨きをかけているデヴィン・タウンゼンド。音楽ファンであるならば、この存在に注目せずにはいられないはずだ。

 

 

 

 

タグ : ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)

掲載: 2014年10月24日 12:54