マンチェスターの偉大なる音楽史を継承する才女ローンレディ
マンチェスターを拠点に活動するジュリー・キャンベルによるソロプロジェクト、ローンレディ。15歳でギターを手にし、大学時代にアメリカン・オルタナティヴに触発された音楽を作り始めた後、〈ファクトリー・レコーズ〉に象徴される地元マンチェスター・シーンの豊かな音楽遺産に触れ、ポストパンク、ニューウェイヴに深く傾倒。〈ワープ・レコーズ〉設立者スティーヴ・ベケットの目に留まり、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやザ・ブリーダーズ等を手掛けるガイ・フィクセンによるプロデュースのもとリリースされたデビュー・アルバム『NERVE UP』(2010年)が、アート・オブ・ノイズの一員にして、ZTTの頭脳でもある音楽評論家のポール・モーリーにも絶賛されるなど、多くから高い評価を受ける。
翌2011年にはP.I.L.再結成のオファーを蹴ったジャー・ウォブルと、ジャー・ウォブル&ジュリー・キャンベル名義のアルバム『Psychic Life』をリリース(同作品では元P.I.L.のキース・レヴィンとも共演)するなど、アーティストや評論家を問わず、英国音楽史において欠かすことのできない偉大な音楽人達から絶大な支持と期待を受けている。潔く、凛とした彼女のアーティスト性は、どこか中性的で洗練されたルックスにも映し出されている。
“辺境”を意味するタイトルがつけられた本作では、英国マンチェスターの中心地から離れた街の外れの荒んだ風景が強烈に描かれている。ESGやマキシマム・ジョイを彷彿とさせるエッジーなファンク・グルーヴを熟成させると同時にスロッビング・グリッスルやキャバレー・ボルテールといった80年代のインダストリアル・ミュージックを掘り下げ、ア・サーテン・レイシオを彷彿とさせるメタリックなパーカッションから、プリンス&ザ・レボリューションから派生したウェンディ&リサにも通ずるフィメール・ファンクまで、ここには異形のファンクがグルーヴむき出しのままに収録されている。
ヴォーカル、ギター、キーボード、チェロ、ドラムマシーン他、すべてを彼女自身で担当し、レコーディングもミックスも自身のホームスタジオで行った後、アメリカ、ミシガン州の工場地帯にある人里離れたスタジオでビル・スキッベ(スティーヴ・アルビニの門下生にして、ザ・キルズやザ・デッドウェザーを手掛けるプロデューサー/エンジニア)のもとで、かつて、スライ・ストーンが所有していたミキシング卓やクラフトワークやプリンスが使用していたことでも知られるドラム・マシーン、様々なヴィンテージのシンセサイザーを用いながら、楽曲をさらに深化、発展させ、本作は完成した。
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掲載: 2015年03月11日 17:47