カタトニア、オーペスのメンバーからなるスーパーグループ=ブラッドバス
カタトニアのアンダース・“ブラックハイム”・ニーストロム(ギター)、そして同じくカタトニアのシンガーであるヨナス・“ロード・セス”・レンクス(ベース)が1998年、オーペスのミカエル・オーカーフェルト(ヴォーカル)、エッジ・オブ・サニティのダン・スウォノ(ドラムス)という編成で結成したのがブラッドバスだ。彼らは2000年、デビューEP『Breeding Death』を発表。暴虐性を極限まで高めた純正デスメタル・サウンドが衝撃を呼んだ。
彼らは『Resurrection Through Carnage』(2002)、『Nightmares Made Flesh』(2004)、『無限支配~ファゾムレス・マスタリー』(2008) と、サイド・プロジェクトの域に留まることのない精力的な活動を続ける。ブラックハイムとロード・セスを中心に、やはりカタトニアのペール・“ソドマイザー”・エリクソン(ギター/2014年にカタトニアを脱退)、オーペスのマーティン・“アクス”・アクセンロット(ドラムス)というラインアップで世界を蹂躙してきたブラッドバスは、3人がカタトニアのメンバーという編成になったが、カタトニアが脱メタルを図るのと逆行するように、デス・メタルの王道へと接近していく。そして2014年、ヒポクリシーのピーター・テクレン(ヴォーカル)に代わってパラダイス・ロストのニック・ホームズが加入、満を持して創りだしたのが最新作『偉大なる病魔の葬送』だ。
スタジオ新作としては6年ぶりとなる本作は、“聖地”フロリダやイェーテボリの源流へと向かう、速く激しく邪悪なデス・メタルだ。1曲目「レット・ザ・スティルボーン・カム・トゥ・ミー」から全編を貫くスピードとバイオレンスは、破壊力を伴うものだ。カタトニアと同様に、近年のパラダイス・ロストは初期のデス/ゴシック/ドゥーム・メタルから徐々に脱却していったが、本作でのニックのヴォーカルは、近作で聴かれるクリーン・ヴォーカルから一気に時代を遡り、デビュー作『Lost Paradise』(1990)ばりのデス・グロウルだ。彼はまたバンド・フォトやビデオに黒い僧衣と白塗りコープスペイント姿で登場しており、このバンドにかける熱意を窺わせる。
カタトニアがアコースティック色の強いライヴ・アルバム『サンクティテュード』を発表、パラダイス・ロストが“ダークでメロディアス”な耽美主義を内包する『The Plague Within』を6月にリリース予定という状況だが、本作は彼らの獣性を解き放つ手段として、さらなる激化を遂げている。
その一方で、彼らの幅広い表現力は本作のサウンドに生かされており、無慈悲に斬り刻むスラッシュ・リフと驚速ドラミングが織りなすドラマツルギーにはスリルが漲っている。さらに本作にはUSデス・メタルの重鎮、初期デスのドラマーでもあるオートプシーのクリス・ライファートとエリック・カトラーがゲスト参加。スウェーデン・イギリス・アメリカのデス・メタル最高峰の邂逅によって究極のうねりが生まれている。
彼らは2015年も活発にツアーを行い、ドイツのヴァッケン・オープン・エアーやフランスのヘルフェストなど、世界最大級のフェスティバルへの出演が決まっており、数万人単位のオーディエンスにそのデス・メタルを叩きつける。彼らがプレイした後、残されるのは“ブラッドバス=血の海”だ。
タグ : ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)
掲載: 2015年03月25日 11:33