UKの要注目バンド、エヴリシング・エヴリシング、渾身の最新作
マンチェスター出身の4ピースバンド エヴリシング・エヴリシング、待望のサード・アルバム。2010年『Men Alive』でデビュー、2010年にはサマーソニック2010で来日も果たしている。独特のヴォーカリゼーション、ひねりの効いたメロディ/アレンジで圧倒的な存在感を放ち、一聴して分かる強烈な個性を持ったバンドだ。前作『Arc』(2013年)ではUKチャートにおいてバンドにとって最高位となる5位にランクインし、UKロック界の重要バンドとして成長してきた。
今作は彼らのサウンドの完成形ともいえる仕上がり。‘UKひねくれロック’の理想を実現させたかのように、他のバンドでは成し得ない実験性に満ちていて、かつ直感的にクールなアルバムに仕上がっている。
もともと知的な雰囲気の漂うバンドだが、フロントマンのジョナサン・ヒッグスが語る通り、制作過程においては、テレビやネットで報じられるニュースからの影響を受けるという。そして、終結を見ない争い、自然災害、病気、金融問題など一筋縄ではいかない問題を抱えながらも、そうした事象に陥るばかりではない人々の強さや信念にも目を向けたい、と語る。例えばリード・シングル「Distant Past」では、デジタルに覆い尽くされた今に原始を呼び戻すようなプリミティブなビートを効かせ、タイトル・トラック「Get To Heaven」では戦争や破壊を彷彿とさせるようリリックと、少しトロピカルなトラックとを共存させている。リリックはシニカルでありながらも、骨太でダンサブルなサウンドが、決して悲観的にならず、強いパワーを感じさせる音世界を描き出すことに成功している。
デビュー以来、イギリス/アイルランドの重要な音楽賞であるアイヴァー・ノヴェロ賞やマーキュリー賞にノミネートされるなど高い評価を受け、また、前作から今作の間にミューズやフォールズとのツアーでもスケール・アップしてきた。バンドの志が、理屈抜きのクールさに昇華された、ロック・ファンなら聴くべき一枚!