レトロ・ソウル/ゴスペルの注目シンガー、リズ・ヴァイス
力強いメッセージを音に乗せ、大胆で熱い歌声を響かせる魂のパフォーマンスに注目ソウルフルな歌声と確かな熱量を感じさせる力強いリリックで人気を集めるオレゴン州・ポートランド出身のアーティスト、リズ・ヴァイスのデビュー盤。
自己表現の根源にストーリーテリングの手法を挙げる彼女のパフォーマンスに、今大きな注目が集まっている。デビュー作となる『There’s a Light』の中でリズは、そのブルース・シンガーともとれるような独特の質感を持った魅力的なしゃがれ声で、彼女ならではのポエティックな世界観を鮮やかに表現してみせる。
時にはまるでアデルやメイヴィス・ステイプルズのように熱く、また時にはノラ・ジョーンズのようにそっと優しく打ち明けるようにして、彼女は我々リスナー、そして神へとその想いを告白する。
そんな彼女の大胆な歌声にぴったりと寄り添う小編成のバックバンド、そしてアルバム全体に通じる引き締まったアレンジは、マッスル・ショールズのそれを想わせるものだ。オープニングを飾る「Abide」から、リスナーの心は一気に現実から引き剥がされ彼女の世界へと運ばれるだろう。穏やかな空気をたっぷりと孕んだサウンドに心洗われること必至の、本作を象徴する一曲だ。
「Entrance」では、まさに神の面前で心の中を吐露するような、彼女の繊細な表現に耳を奪われる。そうして終曲「There’s a Light」の豪快な歌いっぷりに至るまで、リズは次々と表情を変え、人々を魅了し続ける。瑞々しい魅力が詰まったこのアルバムは、時を超えジャンルを超え、多くの音楽ファンに愛される名盤となりそうだ。
自らの痛みや心模様を、郷愁を誘うサウンドに乗せてマイクの前で潔く歌い上げるリズ・ヴァイスのようなニューカマーたちの歌声に耳を傾ければ、そこには単なる懐古趣味とは言い切れない確固たる世界観を感じ取ることが出来るだろう。
掲載: 2015年09月03日 19:03