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あなたをジャズでロックする!トヌー・ナイソー・トリオのグレート・ロック・ソング・ブック

Tonu Naissoo Trio

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これはまた、何ともストイックなジャケットが出来たものだ。柔らかで優し気なイメージのヴィジュアルがほとんどのTõnuのアルバムの「顔」たちの中で、この新作は異彩を放つ。いっそ無骨と言っても良いような力強さと、はっとするようなカッコよさ。タイトルの「R」一発のレタリングが潔い。個人的には素晴らしいデザインだと感じている。ただ、そこから内容を推し量ることは出来ない。ヒントを探るにはジャケを裏返して戴こう。そこに並べられた曲名は、おそらく多くの方がすぐ分かる通り「R」ockのナンバーばかりなのだ。

実は、この企画はTõnu本人が長く温めていた構想の実現で、彼が心からやりたいことをやってみせた、というものらしい。どのアルバムでも必ずポップやロックのフィールドから選曲して、心憎いCookingを披露してくれたピアニストは、きっとこのジャンルを深く愛して来たのだろうと思ってはいたが、それにしても… 。U2、Nirvana、Guns’N、Coldplayと、従来は殆どジャズの素材としては取り上げられなかった90’s の、言ってしまえばオルタナ名曲大全集。

ピアノ・トリオらしからぬその切り口は、しかし、聴いていただければ納得していただける通り、この上なく上質なジャズ演奏へと昇華されている。言い切ってしまおうか? これがTõnuの最高傑作。だってめちゃくちゃ気持ち良いもん。ああ、あの曲たちはこんなに美しいメロディだったか、と、あなたもきっと膝を打つだろう。そうか、TõnuにとってはBonoやAxelこそがGershwinだったんだ! なぜ、こんなに良いものが出来上がったのだろう? それは、このアルバムの背骨となった音楽がアーティストにとっての「R」ootsであり「R」omance であったからに違いない。

Text by北見柊

掲載: 2015年12月24日 20:04