さりげなくも超本格派のピアノ弾き語り!デナ・デローズの新作『United』
1990年代半ばより、〈Sharp Nine〉〈Max Jazz〉といったアメリカを代表するレーベルから作品をリリース。2015年に〈High Note〉への移籍第一弾として発表したシャーリー・ホーンへのオマージュ・アルバム『We Won’t Forget You…A Homage to Shirley Horn』がスマッシュ・ヒットを記録したデナ・デローズの1年振りの新作。
ピアノの弾き語りという形式で、ヴォーカリーズやアドリブといったものも自然に歌い、奏でるデナは、さりげなくも本格派。また今回もマーティン・ウィンドとマット・ウィルソンという10年以上に及ぶ共演歴となる不動のリズム・セクションを迎え、ごく自然に、きめ細かいキメもしっかりおさえて、コンビネーションも抜群の演奏の数々を聴かせてくれます。
今回は、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズで1961年に最初にレコーディングされたウェイン・ショーターのナンバーに詩をつけるという驚きのオープニング。1990年代から時おり共演しているイングリッド・ジャンセンもフィーチャーしてのダイナミックなハード・バップ演奏に新たな魅力も感じます。しかし、基本の路線は変化なく、バラード、ミディアム・スウィングのナンバーの数々をエレガントかつナチュラルに聴かせてくれます。
シダー・ウォルトン「Clockwise」にもデナが詩をつけて弾き語り。
また、数々のスタンダード・ナンバーの中にあって、1曲ながら、マーティン・ウィンドとデナの共作となったオリジナル「Simple Song of Love」も秀逸。
ゆったりとしたスローなリズムにベースのアルコがフィーチャーされたこの曲には、心に染みるようなバラードの美しさがあります。一音一音、呼吸も穏やかに紡がれるピアノ・ソロ、そして、アメリカのルーツを思い起こさせるカントリー的な歌は、美しい映画のエンドロールを見ているようであり、何とも言えないノスタルジーをかきたてます。
意外にもイフェクトをかけた声と、生の声のコントラストを活かしたキャロル・キングの名曲「So Far Away」などといったPOPS曲、またホレス・シルヴァーの代表的バラード名曲「Peace」も聴きもの。
Dena DeRose『United』収録曲
1. United (Lyrics by Dena DeRose) (W. Shorter)
2. Only the Lovely (S.Cahn / J.Van Heusen)
3. Clockwise (C. Walton / D.DeRose)
4. So Far Away (C. King)
5. I’m Glad There is You (J. Dorsey / P.Mertz)
6. Simple Song of Love (M.Wind / D.DeRose)
7. Peace (H. Silver)
8. Sunny (B. Hebb)
9. Not You Again (D. Lamont)
personnel:
Dena DeRose(vo, p)
Ingrid Jensen(tp 1,7only)
Peter Bernstein(g 2, 8 only)
Martin Wind(b)
Matt Wilson(ds)
掲載: 2016年02月18日 20:35