シンガポール出身の若き女性トラックメイカー、エト・アリアェがデビュー
ユミ・ゾーマなどをリリースする優良レーベル、CascineからリリースしたデビューEP『Rose』にボーナス・トラックを加えて日本のみでCD化。
エト・アリアェは幼少期からクラシック・ピアノを学び、バッハやショパンをはじめ、アナ・カプリックスやアリーヤなどにも影響を受けたという。2012年にデザインを学ぶためにロンドンに移り住み、Central Saint Martins へ入学し、彼女の音楽性はよりコンテンポラリーなものへと形成されていった。そして制作したデモ・トラックをオンライン上でシェアすると、ポップさとモダンなコンポジションを兼ね備えた彼女の音楽性は〈ベッドルームトラップ〉とも称され、注目が集まる。そしてライアン・ヘムズワースの目にとまり、彼が自ら運営するフリーダウンロード・レーベル、Secret Songs から2014年にリリースされたコンピレーション『ffb6c1』に正式なファースト・トラック「Baby」がケロ・ケロ・ボニト、Qrion、Cuushe、Kumisolo などの楽曲と共に収録された。また、リミキサーとしてもレモネード、アンナ・オブ・ザ・ノース、ASTR などを手掛けている。
本作『Rose』は彼女の才能と将来性を存分に感じさせる内容だ。レイヤードされたキラキラとしたシンセに小気味良く図太いビートが駆け抜けるメルヘンチックなトラック「Closer Still Closer」で幕を開け、続く2曲目はR&BアーティストのDΔWN をヴォーカルにフィーチャーした、「Sober (feat. DΔWN)」 へと続く。浮遊感に満ちた感傷的なトラックと、DΔWNの伸びやかでエモーショナルな歌唱が見事に融合した至極のダウンテンポR&B。3曲目「Heaven」では寂寥感のある美しいピアノ・フレーズを重ね合わせる中、ビートやエレクロニクスを注ぎ、軽やかな疾走感で引き込んでいく。「Only U」は前述のコンピ『ffb6c1』に収録されていたもの。本人曰く、自己治療のために制作したというトラックは平和を感じたり、心を落ち着かせることが念頭におかれており、ピアノ、ヴォイス・サンプリング、ビートの組み合わせはシンプルで静謐ながら、実にピースフルなムードに包まれた美しいトラックだ。本編最後を飾る「Deep Dive」はドライヴ感のあるシンセとビートが駆け巡る中、時折煌めくフレーズを絡めつつ、程よくアッパーに展開していくサウンド。
これらに加えMalory とEest Coast による「Sober」のリミックス、さらにはCuusheをヴォーカルにフィーチャーした新曲の計3 曲をボーナス・トラックとして収録。
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掲載: 2016年06月28日 18:30