エリック・ゲイルズ、約6年振りの最新スタジオ・アルバム
ブルースが欲しいのかい?
「残念だが、何かから自由になるという経験を味わうことがなければダメだね」そうエリック・ゲイルズは語りこう続ける。「今俺は、これまでの人生で最高に自由な気分を味わっている。子供の頃よりもずっとね。しっかりしなきゃダメなんだ。自分で自分を支えられるようになれば、他の人も支えることができるのさ」
ジョー・ボナマッサが「間違いなく、世界最高のギタリストの一人」と語り、デイヴ・ナヴァロも「何故エリック・ゲイルズがロック・ギター界最大のビック・ネームじゃないのかは本当に謎だ」と首を傾げ、カルロス・サンタナも「彼は驚くほど素晴らしいよ」と声を上げた、メンフィス出身のブルース・ギタリスト、エリック・ゲイルズ(Eric Gales)。子供の頃から天才ギタリストとして注目を集めていた彼は、 1991年、16歳でエレクトラと契約。その後10数枚のアルバムを発表し、いくつかのコラボレーションやセッション参加をしてきた彼が、通算15作目となる最新スタジオ・アルバム『MIDDLE OF THE ROAD (ミドル・オブ・ザ・ロード)』をリリースする。
本作のプロデュースを手掛けるのは、スティーヴ・ルカサー、スティーヴ・ヴァイ、ジョー・ボナマッサ、ビリー・ギボンズなど、数々のギタリスト達のアルバムを手掛けてきたファブリツィオ・グロッシー(Fabrizio Grossi)。何でもファブリツィオは15年ほど前に、ジョージ・クリントン&ザ・Pファンクのプロジェクトでエリックと仕事をして以来、彼のファンだったという。
最新作のタイトル『MIDDLE OF THE ROAD』は、エリック曰く、アルバム全編を流れるテーマでもあるという。「このアルバムは、完全に集中して、道の真ん中を進めってことなんだ。端に寄りすぎて、砂利道を歩くのも良くないし、中央分離帯に乗り上げてしまうのも、また良くない。だから道の真ん中を行くのがベストなのさ」
そうエリックが語るのも、彼自身が道をやや踏み外した経験を持っているからだ。2009年、ドラッグと武器の不法所持の罪でシェルビー矯正センターに収監されていた彼はそこで、看守や守衛たちに「ここなお前のいるべき場所じゃない。ここから出たら、この難局を乗り越えて突き進むんだ」と言われたという。実際彼が完全に立ち直るまで、そこからまた数年掛ったそうだが、今現在、彼は新たに生まれ変わり、市長の前やフェスティヴァルで演奏し、“ジョニー・キャッシュのウォーク・ザ・ライン”のエリック・ゲイルズ・ヴァージョンを歩んでいるのだ。
本作『MIDDLE OF THE ROAD』には、見事は復活を遂げたエリック・ゲイルズの姿が余すところなく表現されている。自分自身を掘り下げたパーソナルで内省的な作品であり、自伝的なテーマは、まるで彼の歩んできた道を一緒に辿っているかのような気にさせてくれる。そのアルバムの中で、彼は未だかつてないほど自分を曝け出し、そして自由にのびのびとギターを弾きまくっている。更に、そんな彼を、兄弟たち、そしてゲイリー・クラークJrといった面々がサポートしているのだ。
「このアルバムを聴けば、俺の言う“世界が知ることになるだろう”の意味が分かると思う。これは、今まで行ったことのない場所や、行きたかった場所へと誘ってくれるアルバムなんだ」――エリック・ゲイルズ
掲載: 2017年01月30日 14:46