ダイアナ・クラール、約11年振りとなるジャズ・スタンダード・アルバム
ダイアナ・クラールを発掘し、アーティストとしてのキャリアをともに歩んできたトミー・リピューマがプロデュース。
トミー・リピューマはマイルス・デイヴィスやジョージ・ベンソン、そしてポール・マッカートニーのジャズ・アルバム『キス・オン・ザ・ボトム』のプロデュース、また90年代にはフュージョンやAORの名作を数多く手がけるなど幅広く活躍してきたジャズ界の重鎮。
デビュー前のダイアナの才能を見抜き、自身が運営したレーベルと契約。彼女の輝かしいキャリアを支え続けてきた巨匠プロデューサーが、今回約11年ぶりにジャズ・スタンダード・アルバムを制作するために8年ぶりにタッグを組むことになった。
ダイアナ・クラール『ターン・アップ・ザ・クワイエット』収録楽曲解説
1: ライク・サムワン・イン・ラヴ / Like Someone In Love
1944年のアメリカ映画『ユーコンの女王』の挿入歌。主人公に思いを寄せる少女を演じたダイナ・ショアが劇中で歌い、翌年ビング・クロスビーがカヴァーし大ヒット。ジャズ・スタンダードとして様々なアーティストが名演を残していて、とくに有名なのは“ジャズ界のジェームス・ディーン”チェット・ベイカー(『チェット・ベイカー・シングス』収録)のヴァージョンと、ダイアナが所属するVerveの初期の大看板アーティスト“ファースト・レディ・オブ・ジャズ”エラ・フィッツジェラルドのヴァージョン(『ライク・サムワン・イン・ラヴ』収録)。
2: ロマンティックじゃない? / Isn't It Romantic?
1932年のフランスのマルセル・アシャール原作のミュージカル映画『ラヴ・ミー・トゥナイト』挿入歌。有名なリチャード・ロジャース作曲、ロレンツ・ハート作詞という黄金コンビによる大スタンダード(「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」など有名スタンダード連発コンビです)。オードリー・ヘップバーン主演2作目『サブリナ』でも効果的に使用され、ビル・エヴァンス『ライヴ・アット・シェリーマン・ホール』の名演をはじめ、エラ・フィッツジェラルドが1956年から毎年1枚ずつリリースしていた人気企画“ソングブック・シリーズ”において、『ロジャース&ハート・ソングブック』で取り上げたヴァージョンがヴォーカルでは極め付きといわれています。
3: ラヴ / L-O-V-E
1930年代からジャズ・ピアニストとして活躍し、その後シンガーとして、ジャズ界のみならずポップスのフィールドでスターとなったナット・キング・コール1965年の大ヒット。肺がんで亡くなる2か月前にレコーディングを行い、生前最後の楽曲となったこの曲は7か月以上にわたり全米シングル・チャートに入り続け、その後ザ・ビートルズに抜かれるまでチャート・イン最長記録を樹立。ちなみにこのナット・キング・コールのヴァージョンは、日本語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、フランス語でも歌われ、各国でリリースされました。日本では2004年映画『スウィングガールズ』のエンディングで起用されたことも話題になりました。
4: ナイト・アンド・デイ / Night And Day
1932年のミュージカル『陽気な離婚』でフレッド・アステアが歌い、1934年に映画化された際に(邦題『コンチネンタル』)主題歌として取り上げられたヒット・ソング。映画音楽やミュージカルの世界で活躍した名作曲家コール・ポーターの代表曲で、彼の自伝映画『夜も昼も』でも主題歌となりました。ヴォーカルではエラ・フィッツジェラルドの“ソングブック・シリーズ”のヴァージョンや、フランク・シナトラの歌唱がとくに有名で、ボサ・ノヴァ界の大御所セルジオ・メンデスのヴァージョンも人気です。
5: アイム・コンフェッシン / I'm Confessin' (That I Love You)
1930年に当時の人気ジャズ・ピアニスト=ファッツ・ウォーラーが「ルッキン・フォー・アナザー・スウィーティ」というタイトルでリリースするもヒットせず、翌年タイトルを「アイム・コンフェッシン」に変え、歌詞をつけたヴォーカル曲としてルディ・バレーがリリースしたところヒットしたという人気スタンダード曲。ペギー・リーやドリス・デイなど女性ヴォーカルの名歌唱が多いので有名です。
6: ムーングロウ / Moonglow
ミュージカル『ブラックバーズ・オブ1934』に向けて作曲家ウィル・ハドソンがビッグ・バンド・ジャズ界の大スターだったデューク・エリントンの楽曲「レイジー・ラプソディ」からインスパイアされて作曲。ウィル・ハドソン本人のビッグ・バンドで初演しましたが、同年“スウィング王”ベニー・グッドマンのヴァージョンが大ヒット。ベニー・グッドマンに初の全米チャート1位をもたらしました。更に1953年ミュージカル『ピクニック』で使われリヴァイヴァル、さらに1955年に映画化もされアカデミー賞を受賞し大スタンダードとなりました。
7: ブルー・スカイズ / Blue Skies
最初はリチャード・ロジャース、ロレンツ・ハートの名コンビがミュージカル用に書き下ろした楽曲でしたが、1927年、世界初のトーキー(音声付映画)『ジャズ・シンガー』で、主演を務めた大エンターテイナー=アル・ジョンソンがこの曲を歌い大ヒットを記録。1946年にはビング・クロスビー、フレッド・アステアによりこの楽曲をモチーフに同名映画も制作されるほどの人気を誇りました。カウント・ベイシーやベニー・グッドマンのヴァージョンが全米Top10ヒットを記録したほか、ヴォーカルではエラ・フィッツジェラルドやダイナ・ワシントンのヴァージョンがとくに有名です。
8: スウェイ / Sway
1953年にメキシコの作曲家パブロ・ベルトラン・ルイスによって作曲され、トリオ・ロス・パンチョスが大ヒットさせた「キエン・セラ?」という楽曲を英訳したのがこの楽曲。ラテン音楽界の大スタンダードではありますが、1954年にディーン・マーティンがカヴァーしたこの「スウェイ」が全米シングル・チャート15位、全英シングル・チャート6位という大ヒットを記録し、ジャズ界でもスタンダード・ナンバーとして親しまれるようになりました。ちなみに英訳を手掛けたのはノーマン・ギンベルで、この人は「イパネマの娘」はじめ南米音楽の英訳で大成功した人物。日本でも1959年にザ・ピーナッツがカヴァーしたほど、世界的にカヴァー楽曲が存在する楽曲です。
9: 月とてもなく / No Moon At All
作曲家デイヴィッド・マンの代表曲で、4人組コーラス・グループ“エイムス・ブラザーズ”によりポップス・ヒットを記録。ジュリー・ロンドンが代表作『彼女の名はジュリー』で取り上げたほか、ナット・キング・コールのヴァージョンなども有名。ピアニストにも人気の曲で、奇才キース・ジャレット、そしてキースの流れをくみ現在最も人気の高いピアニスト=ブラッド・メルドーなどの有名ヴァージョンも存在します。
10: ドリーム / Dream
キャピトル・レコードの設立者で、副社長も務めた作曲家ジョニー・マーサーが1944年に作曲したスタンダードで、自身のラジオ番組のエンディング・テーマとして使用していました。ジャズ・コーラス・グループ=パイド・パイパーズのヴァージョンは1945年3月から18週連続全米チャート1位を記録する大ヒットとなりました。シナトラの歌唱も有名ですが、その後映画『夢のひと時』やフレッド・アステア&レスリー・キャメロン主演映画『足ながおじさん』で使用されたことでリヴァイヴァル・ヒット。
11: 夢で逢いましょう / I'll See You In My Dreams
アイシャム・ジョーンズが作曲しガス・カーンが作詞、ジョーンズが自身のビッグ・バンドで発表し1925年に16週チャート・イン、7週連続1位の大ヒットを記録。1951年にはガス・カーンの伝記映画『夢で逢いましょう』で使用されました。ルイ・アームストロングやエラ・フィッツジェラルドのヴァージョンが愛聴され、ジャズのスタンダードとして親しまれています。
新作の発売を記念して、ダイアナ・クラールのカタログ作品をミッド・プライスでアンコール・プレス
掲載: 2017年02月20日 17:47