WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.7
リー・モーガン『ザ・サイドワインダー』(1964)
リー・モーガン(tp)
ジョー・ヘンダーソン(ts)
バリー・ハリス(p)
ボブ・クランショウ(b)
ビリー・ヒギンズ(ds)
1963年12月21日 ニュージャージーにて録音
曲目:
1.ザ・サイドワインダー
2.トーテム・ポール
3.ゲイリーズ・ノートブック
4.ボーイ・ホワット・ア・ナイト
5.ホーカス・ポーカス
【アルバム紹介】
1.8ビート・ジャズのモンスター・ヒット曲“ザ・サイドワインダー”
2.しぶいメンツがそろった超一級のハードバップ・セッション
3.天才リー・モーガン、1972年に33歳で没
ヘレン・メリルの“ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ”は言ってみればアルバム『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』からのシングル・カット曲といってもいいほど、ひときわキャッチーな1曲でした。1964年7月、トランぺッターのリー・モーガンがリリースした傑作アルバム『ザ・サイドワインダー』は、そのタイトル曲が実際にシングル・カットされ、当時大ヒットを記録しました。
このアルバムが、レコーディングされたのは奇遇ですが、ちょうど55年前、1963年の本日(12/21)です。
シングルは翌1964年発売後ビルボードのポップ・チャートで100位以内に、さらアルバムが25位以内にランクインし、ブルーノート・レーベル創設以来のモンスター・ヒットとなりました。ちなみにこの1964年という年は、全米にビートルズ旋風が吹き荒れた年で、4月のビルボード・シングル・チャートでは1位から5位まで、ビートルズ・ナンバーで占められる、という事態も発生しております。
そんなロック台頭の時代背景もあり、この“ザ・サイドワインダー”という曲、当時としてはジャズでありながら、リズムが4ビートではなく、8ビートのナンバーゆえ、相当なインパクトだったのではと想像できます。決して純粋なロック・ビートとはいいがたいリズムですが、イントロのベースのフィルインに導かれて始まる最高なグルーヴ・ビートは今聴いてもまったく色あせることもなく、聴く者誰でもグイグイと引っ張って行ってくれます。
この1曲目の“ザ・サイドワインダー”以下、アルバム全曲がリー・モーガン作曲によるオリジナルの楽曲で占められ、録音時、リー・モーガンは25歳、バックのミュージシャンはテナー・サックスのジョー・ヘンダーソンは26歳、ピアノのバリー・ハリスは34歳、ベースのボブ・クランショウは31歳、ドラムスのビリー・ヒギンズは27歳と若手と渋い実力派の顔ぶれがそろった超一級のハードバップ・セッションになっています。
リー・モーガンは初めてブルーノート・レーベルにレコーディングしたのは1956年で、その時なんと18歳。早熟の天才でした。翌1957年にリリースしたアルバム『リー・モーガンVol.3』に収録された名バラード“アイ・リメンバー・クリフォード”はとても10代とは思えない、堂々たるプレイを聴かせており、同曲の、ジャズ史上に残る名演の一つになっております。
一方で、その人生はあまりに早く最期を迎えました。
1972年2月、ニューヨークでのライヴの休憩時間中に愛人に射殺され、33歳の若さでこの世を去ったのです。
この経緯はドキュメンタリー映画『私が殺したリー・モーガン』で描かれており、昨年末に劇場公開されました。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
間違いなく本作は“ザ・サイドワインダー“がキー・トラックですが、2曲目“トーテム・ポール”も必聴。
LP時代だとA面はこの2曲のみ収録。B面に裏返す前に“ザ・サイドワインダー”の8ビートのゴー・ゴー・リズムで踊って、次の“トーテム・ポール”での細かなシンバルワークによる独特のビートの上を行くエキゾ感が漂うメロディラインとコード進行に浸るという悦楽がありました。
このアルバムのヒットを受けて、その後、ジャズ・ロック風の曲を収録したアルバムをいろいろなアーティストも出すようになっていきますが、アルバム発売の翌年1965年のリー・モーガン自身がリリース&参加したアルバムだけをとっても、1曲目にジャズ・ロック風の楽曲を置くという、このパターンが定着しております。それが以下の通りです。機会がありましたらぜひご一聴を。
“リー・モーガンのリーダ―作:
『ザ・ランプローラー』よりタイトル曲(1曲目)※現在廃盤
『ザ・ジゴロ』より“イエス・アイ・キャン、ノー・ユー・キャント” (1曲目)
『コーンブレッド』よりタイトル曲(1曲目)
リー・モーガン参加アルバム(ドラムスも同じビリー・ヒギンズ)
ハンク・モブレイ『ディッピン』より“ザ・ディップ” (1曲目)
ハンク・モブレイ『ア・キャディ・フォー・ダディ』よりタイトル曲(1曲目)※現在廃盤
SHM-CD国内盤(一般普及盤)
UHQCD国内盤
SACD-SHM仕様国内盤
輸入盤
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2018年12月21日 12:30