イスラエル出身のジャズ・アーティスト、Omer Klein(オメル・クライン)ニュー・アルバム『Radio Mediteran』
現在ジャズ・シーンの新たな勢力として注目度上昇中のイスラエル出身のジャズ・アーティストたち。オメル・アヴィタル、アヴィシャイ・コーエンやシャイ・マエストロなど、確固たる人気を集めるアーティストたちが続々登場する中、期待のアーティストが新作を発表した。
イスラエル出身、ニューヨークでの活動を経て、現在はドイツを拠点に活躍するOmer Klein (オメル・クライン)。彼が同じイスラエル出身のAmir Breslter(Dr.)、Haggai Cohen-Milo(b)と結成したトリオによるニュー・アルバム『RADIO MEDITERAN』。タイトルが表すように、本作は、地中海とそこに住まう人々、またそこから生まれた文化と音楽にインスパイアされた作品だという。
2015年のトリオ作『FEARLESS FRIDAY』で、幅広い注目を集めたOmer。彼にとって通算8作目となる本作では、テーマである“地中海”を取り囲む国々の音楽からもインスピレーションを得ているという。アルバムに収録されている9曲は、モダン・ジャズ・ピアノから、チュニジア、トルコ、リビア、モロッコ、中東まで、地中海を取り巻く国々から生まれた多彩な音楽が、大胆に、そして自由に重なり合い、混ざり合い、独特の音楽世界を作り出している。ジャズを基盤にしながら、バルカン半島の音楽やアラブのフォーク・ミュージックなどの要素が見え隠れしている彼らの音楽だが、今作ではさらにアナログ・シンセサイザーやパーカッションを取り入れ、ポップな側面も出している。
「私たちは全員、地中海の近くで育ったから、とても強い繋がりを感じている」Omerはそう説明する。「コンサートを終えた後、HaggaiとAmirと私はホテルで音楽を聴いているんだ。”SLEEPWALKER”のツアーの時、互いに聴かせていた音楽のほとんどが、北アフリカやバルカン半島、そしてアラブの音楽であることに気付いた。これが『RADIO MEDITERAN』のインスピレーションになった」これを切っ掛けに地中海に魅せられたOmerは、その地域の歴史を調べ、そこから生まれた音楽を聴きながら、自分自身の過去や文化的繋がりを探求するようになったのだった。「だんだんと地中海が、秘密の大陸みたいに思えてきた。そこに属する各国がそれぞれ思っている以上に多くの共通点を持つ文化圏だとね」
完成したアルバムは、しかし民俗音楽的な作品にはならなかった。「音楽をそのままコピーしたくはなかった。その代わり、自分たちの中に吸収消化し、新しい解釈を加えることによって、究極的には新たなジャンルを作り出したいと思ったんだ」そうOmerが語る本作『RADIO MEDITERAN』は、豊かなアコースティック・サウンドにアナログ・シンセの音色が加わった“古代から続く海への超モダンなラヴ・レター”なのだ。そのサウンドは、大きな海のように、新しいサウンドを探求したいと思う、ありとあらゆるジャンルのファンをやさしく受けいれるのだ。実際Omerもこう締めくくっている。
「自分たちの世代のミュージシャンが奏でるジャズは、どんどん境界を広げているような気がするんだ。若い人たちがどんどん自分たちのショウに来てくれるようになった。もしかすると、もう新しい時代に突入しているのかもしれないね」
【収録曲】
01. Our Sea
02. Tripoli
03. Radio Mediteran
04. Sofia Baby
05. Desert Trip
06. Protest
07. Arak
08. Solois
09. Last Day of School
掲載: 2019年02月15日 10:17