WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.15
デューク・エリントン『ザ・ポピュラー・デューク・エリントン』(1966)
デューク・エリントン(p)
キャット・アンダーソン、マーサー・エリントン、クーティ・ウィリアムス(tp)
ローレンス・ブラウン、バスター・クーパー(tb)
チャック・コナーズ(btb)
ラッセル・プロコープ(as,cl)
ジョニー・ホッジス(as)
ジミー・ハミルトン(ts, cl)
ポール・ゴンザルヴェス(ts)
ハリー・カーネイ(bs)
ジョン・ラム(b)
サム・ウッドヤード(ds)
1966年5月9~11日、LAにて録音
曲目:
1.A列車で行こう
2.アイ・ガット・イット・バッド
3.パーディド
4.ムード・インディゴ
5.黒と茶の幻想
6.ザ・トゥイッチ
7.ソリチュード
8.私が言うまで何もしないで
9.ザ・ムーチ
10.ソフィスティケイテッド・レディ
11.クリオール・ラヴ・コール
【アルバム紹介】
1.20世紀が生んだ最大のビッグバンド・リーダー 、デューク・エリントン
2.ジャズ史に残る大作曲家(筒美京平、小室哲哉のような)
3.60年代LA録音によるエリントン入門盤
クリフォード・ブラウン&マックス・ローチの名演による名曲“A列車で行こう”を前回は紹介しました。その曲を作曲したのが今回の主役デューク・エリントンです。
エドワード・ケネディ・“デューク”・エリントンは1899年4月にワシントンに生まれ、1974年5月にニューヨークで75歳の生涯を閉じた、20世紀が生んだ最大のビッグバンド・リーダー、コンポーザーです。1920年代にはニューヨークのコットンクラブで自身のオーケストラを率いて演奏活動をしていた早熟の天才でもありました。
同時代のビッグバンド・リーダー、ウィリアム・ベイシーが“カウント”(伯爵)・ベイシーと呼ばれたのに対し、“デューク” (公爵)と呼ばれたのは、振る舞いの優雅さや服装のセンスの良さなどから、そのニックネームとして定着したという説があります。
またデューク・エリントンはビッグバンド・リーダーの素質に加え、作曲家としての才能は他のビッグンバンド・リーダーとは一線を画し、世に送り出してきた数々の楽曲の多くは今やスタンダード曲となっています。日本のポピュラー音楽界に例えれば筒美京平、小室哲哉のようなメロディ・メイカーだったといえる存在です。
エリントン楽団からはジョニー・ホッジス、キャット・アンダーソン、ポール・ゴンザルヴェスら、個性的な名プレイヤーを多数輩出していますが、エリントンはこれらのプレイヤーがソロをとることを意識して常に作曲し、そのプレイヤーの最大のポテンシャルを引き出すことでクリエイトする音楽に最高のクオリティをもたらしていました。そのことは、デューク・エリントンが弾く楽器はピアノではありましたが、実際にはこのオーケストラこそが彼の楽器だったと言われる所以となっています。
本作はエリントンの名曲を凝縮した1枚となっており、千を超える曲を書いたと言われるエリントンの楽曲のうち「どれを聴けばいいんだろう?」という人にはまさに入門編として最適なアルバムです。とはいえ、録音された時代は1966年であり、1930年~40年代のスイング・エイジのビッグバンド・アレンジとは違い、少々音楽的に変化を持たせたアレンジによる、モダン・ビッグバンド的な要素も感じられる独創的な演奏になっている点が特徴です。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
エリントンのピアノで始まる“ソフィスティケイテッド・レディ”を。
“A列車”を始め、“ムード・インディゴ”、“ソリチュード”など先述の通り、エリントンの名曲中の名曲を収録しているアルバムですが、少々凝ったアレンジゆえ、どの曲もその展開をじっくり聴かせるような音楽になっています。
そんな中で、エリントンのピアノから始まりムーディに進行する名曲“ソフィスティケイテッド・レディ”をおススメします。
エリントンのピアノでテーマAメロ部分が提示され、それがアルト・サックスに受け継がれ(そのバックでの他の管楽器群による対位法的な旋律が見事)、Bメロは再びエリントンのピアノ、そして再びAメロではホーンのドリーミーなアンサンブルで進行してゆきます。
エリントン楽団には、その音楽を構成する上でなくてはならない名プレイヤーが多数在団しておりましたが、そんなメンバーたちを大フィーチュアし、まるで “ロック・バンドのような”熱狂的パフォーマンスを記録したライヴ盤をここで紹介します。
それが1956年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルのドキュメントであるアルバム『Ellington at Newport』です。各曲の演奏後に、素晴らしいソロを行ったメンバーを連呼するエリントンのMCからメンバーに絶大な信頼を寄せていることがビシビシ伝わってきますが、その最大の聴きどころは14分以上にわたる熱演を繰り広げる“ディミニュエンド・イン・ブルー・アンド・クレッシェンド・イン・ブルー”です。ここで、エリントンはテナー・サックスのポール・ゴンザルヴェスに27コーラスものソロをとらせ、オーディエンスの熱狂は最高潮に達し、ものすごい大歓声に包まれます。ロックというジャンルが出てくる前の時代にあった熱狂的なパフォーマンスとして知っておきたい貴重な記録でもあります。
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タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2019年02月22日 10:00