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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.27

バド・パウエル 『ザ・シーン・チェンジズ』(1959)

BP

バド・パウエル(p)
ポール・チェンバース(b)
アート・テイラー(ds)

1958年12月29日録音

曲目:
1.クレオパトラの夢
2.デュイッド・ディード
3.ダウン・ウィズ・イット
4.ダンスランド
5.ボーダリック
6.クロッシング・ザ・チャンネル
7.カミン・アップ
8.ゲッティン・ゼア
9.ザ・シーン・チェンジズ

【アルバム紹介】
1.これぞビバップ・スタイルのピアノ
2.名曲“クレオパトラの夢”
3.唸り声(呻き声)とともに軽快にスイング

前回取り上げましたセロニアス・モンクは天才ゆえ、数々のジャズ・ピアニストに影響を与えました。その同時代にモンクを友人、良き師匠としてリスペクトし、40年代~50年代のビバップ期のジャズ・ピアノ・スタイルを確立したのがバド・パウエルです。
ビバップといえば、サックスでいえばチャーリー・パーカーは高速なテンポでもまるで歌っているかのような、ムダ音が一音もないフレージングでブロウするスタイルが特徴ですが、バド・パウエルはそれをピアノでやってみせた第一人者です。

本作はそのバド・パウエルのキャリアの中では中期の代表作として知られる1作であり、ブルーノートの4000番台を代表する名作です。タイトルにある『アメイジング・バド・パウエル』のシリーズ最後のVol.5にあたります。ジャケットには3歳になるバド・パウエルの息子が写っており、昭和30年代のジャズ喫茶ブームの頃、日本では大人気だったアルバムです。

楽曲は全曲バド・パウエルのオリジナルであり、ビバップ・マナーでスイングするナンバーが揃っています。なかでも1曲目“クレオパトラの夢”はバド・パウエルの代表曲であり、知らない人でも聴いてみると「あ、この曲か」というほど、各方面で聴かれる1曲でもあります。この他、リズム・アレンジが独特な“カミング・アップ”のようなユニークなナンバーも顔を出します。

このアルバムを聴きはじめると、ピアノのメロディに寄り添うように、なんだか不思議な音が聞こえてくるのがわかると思います。これ、バド自身の“唸り声(呻き声)”なのです。ジャズのピアニストにはこういう声を発しながら鮮やかなソロを聴かせるピアニストは他にもいて、オスカー・ピーターソンもそうですし(無声の場合も多々あり)、キース・ジャレットも有名です(この人の場合、踊りも伴います)。また補足ですが、クラシックではグレン・グールドがそういう演奏スタイルを披露していることで有名です。

なお、バド・パウエルは天才ピアニストとしてのキャリアを邁進しながらも、50年代以降、ドラッグ、アルコール中毒の上、メンタルの障害にも悩まされたといいます。幾度も復帰をしましたが、1966年に41歳の若さで亡くなりました。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
“クレオパトラの夢”、ですね。

エキゾチックなタイトルのこの曲、イントロもなくいきなりテーマから入っていき、軽快にスイングしながらもバドの技巧的なフレージングで駆け抜けてゆく独特の魅力に満ちています。初めて聴いた人でもかなり印象に残る曲調でジャズの曲としては極めてキャッチーな部類に入ります。
それゆえ、でしょうか、一時はTVでのオンエアもあり、それでよく知られることにもなりました。80年代後半に知った、という人は作家の村上龍がホストをつとめたトーク番組『Ryu's Bar 気ままにいい夜』のテーマ曲として認知しているのではないでしょうか(その時の演奏は山本剛トリオ)。その後、ビールや車のCMでもオンエアされたりしたことで、“どこかで耳にしたジャズ名曲”の仲間入りをしました。
このバド・パウエルのビバップ・スタイルのピアノはその後のピアニストにも大きな影響を与えており、その系列にあたるピアニストの代表作を下記に挙げておきます。機会があったら聴いてみてください。

・バリー・ハリス/アット・ザ・ジャズ・ワークショップ(1960)
名手バリー・ハリスのサンフランシスコのジャズ・クラブ“ジャズ・ワークショップ”でのライヴ・パフォーマンスを収録した代表盤。スインギーな魅力全開のプレイが絶品です。
・クロード・ウィリアムソン/クロード・ウィリアムソン・トリオ(1956)
別名“白いパウエル”。ベツレヘム・レーベルのウィリアムソンの初期代表盤。時にブルージーな音使いも交えながら、渋いプレイで聴かせます。
・アル・ヘイグ/アル・ヘイグ・トゥデイ!(1964)
パウエル直系のピアニストならではスイング感と、どこか気品に満ちたタッチでバラードも聴かせるアル・ヘイグ。スタンダード・ナンバーを巧みにアレンジして抜群の解釈で聴かせてくれます。
・ローランド・ハナ/イージー・トゥ・ラヴ(1960)
ロマンティックなジャケット・デザインで有名なローランド・ハナの代表作。ライトなタッチの中に、風格のあるプレイでスタンダード曲を綴っていきます。

SHM-CD国内盤(一般普及盤)

 

UHQCD国内盤

 

UHQCD x MQA-CD国内盤

 

SA-CD国内盤

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2019年05月24日 12:00