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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.30

マル・ウォルドロン『レフト・アローン』(1960)

MW

マル・ウォルドロン(p)
ジャッキー・マクリーン(as)
ジュリアン・ユーエル(b)
アル・ドリアース(ds)

1959年2月24日ニューヨーク録音

曲目(収録曲・内容はレコード発売時もの):
1.レフト・アローン
2.キャット・ウォーク
3.恋を知らないあなた
4.マイナー・パルセ―ション
5.エアジン
6.ビリー・ホリデイを偲んで

【アルバム紹介】
1.日本で超人気、マル・ウォルドロンといえば名曲“レフト・アローン”
2.名シンガー、ビリー・ホリデイへの追悼
3.ジャッキー・マクリーンのアルト・サックスは“レフト・アローン”1曲だけ参加

前回紹介しましたチャールズ・ミンガスの『直立猿人』に参加していた2人のミュージシャン、ピアノのマル・ウォルドロン、アルト・サックスのジャッキー・マクリーンが共演した大名盤がこの『レフト・アローン』です。

本作はマル・ウォルドロンの代表作であり、マル自身によって書かれた、マルを語る上で欠かせない名曲“レフト・アローン”の初演が収録されています。
このアルバムはジャズ喫茶全盛時代の日本では超人気盤のひとつでしたが、本国アメリカではそれほど有名なジャズ・アルバムではないという認識で知られています。それゆえ、1980年代のCD化時代にいち早くCDで発売したのも日本であり、アメリカでの初CD化は記録では1996年と、かなり後になっています。

“レフト・アローン”という曲が出来た経緯は、マルが、女性シンガーのビリー・ホリデイの最晩年のピアニストをつとめたことと関係しています。ビリーが作詞、マルが作曲という形で実際にライヴで演奏はされたそうですが、ビリーはこの曲をレコーディングすることなく1959年7月に亡くなってしまいました。そのため、本作はビリーへの追悼の意をもって捧げられた1枚となっています。

参加メンバーはマルのトリオにアルト・サックスのジャッキー・マクリーンが加わっております。そのマクリーンが“レフト・アローン”では情感あふれる泣きのアルトで一世一大の名ブロウを聴かせています。アルバムを聴き進んでいくとわかりますが、2曲目“キャット・ウォーク”以降はすべてピアノ・トリオの演奏、しかもラストのトラックはマル自身がビリーの思い出を語るインタビュー・トラックであり、マクリーンのアルトは“レフト・アローン”でしか聴けないのです。そのことが、アルバム中“レフト・アローン”だけが突出して印象に残る理由のひとつでもあります。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
“レフト・アローン”はマスト。

本作を語る際、極端な言い方をすれば「1曲目の“レフト・アローン”を聴けばそれでよい」と、かつてはよく言われたりしましたが、それはこの曲がマルのオリジナル曲であり、本作に収録の演奏曲の中で、イントロ、メロディ、曲に漂うアトモスフェアすべてにインパクトが強いせいでもあります。
イントロはマルのピアノの重々しい響きがダークなイメージを提示しますが、そこに導かれて、吹き始めるマクリーンによる哀感あふれるメロディ・ラインがこの曲の持つ奥深い世界へ誘い込みます。
先述の通り、アルバム自体は日本で特に人気の高いと言う話がありましたが、この曲は1980年代に日本でヴォーカル・バージョンによって、リバイバル・ヒットしており、ジャズ喫茶世代以降にもお馴染みの1曲となった経緯があります。1986年に公開された野村宏伸主演の角川映画『キャバレー』の主題歌として、ジャズ・ピアニストの鈴木宏昌のアレンジで、シンガーのマリーンが歌ったバージョンがそれです。当時角川映画はスタイリッシュな宣伝方法で数々のヒット映画を送り出していましたが、その宣伝CMのバックに流れるマリーンの歌う“レフト・アローン”により、多くの人に強烈な印象をうえつけました。そこから溯ってオリジナルのマルのこの曲のバージョンを初めて耳にしたという人はかなりいたことだと思われます。マリーンのバージョンは現在はベスト盤で聴けますが、2007年のサックスの本田雅人とのコラボ・アルバム『ジャズ&アウト』で、再録しているバージョンもあります。

UHQCD国内盤(一般普及盤)

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2019年06月14日 12:30