Thom Yorke(トム・ヨーク)、最新ソロ・アルバム『ANIMA』登場
photo by Alex Lake
トム・ヨークは再びクリエイティヴなルネッサンスを迎えている ―― そう感じている人間は多いと思う。彼は常に新たな音世界を模索してきた。だが主要な音源作品に絞っても、10 年代のアウトプットは『The King of Limbs』(2011/レディオヘッドのスタジオ・アルバム通算8作目)から始まり2013年『AMOK』(アトムス・フォー・ピース)、2014年『Tomorrow’s Modern Boxes』、2016年『A Moon Shaped Pool』(レディオヘッド9th)、2018年『Suspiria』(初の映画サントラ全編担当)と実に精力的かつ広範にわたる。そんな風に運動し進化し続ける連続体アーティストの最新地点を、本作『ANIMA』は最良な形で提示している。
「このレコードの制作過程はライヴ・ショウをやることから出て来た」と語るように、本作は今やステージでも良き相方となったナイジェル・ゴドリッチ、そして映像作家タリク・バーリと共に『Amok』以降展開・成長させてきたオーディオ・ヴィジュアル型のエレクトロニック/DJセットから発している。サマーソニック2015 のHCA 出演時に披露された①③を筆頭に、収録曲の多くは過去数年様々なクラブ・ショウやライヴで試運転済み。この間レディオヘッドの世界ツアーを含む複数プロジェクトが活発に同時進行していたことを思えば、こうして1枚にまとまるまでに4年以上の歳月が流れたのも不思議はない。
だが待たされただけのことはある。過去のアーカイヴ音源も含む豊富なサンプリング/ループ素材やアイディアをナイジェル・ゴドリッチがコラージュし再構築したものを基盤に歌をつけていく――キャッチボール型の共同作業を通じ生まれた本作のめくるめくビート・メイクとモダン・エレクトロニカのダイナミズム&プロダクションはコンテンポラリーかつダンサブル、聴き手の耳を奪い魅了する。シーン最前線の鼓動とシンクロしながら、そこで得てきた発見が見事に咀嚼・吸収されている。
とはいえ身体を揺すらずにいられない、クラブ音楽のノンストップな快楽に満ちたトラックばかりではない。④⑨といった瞑想型のアブストラクトな楽曲や随所にちりばめられたヴォーカル加工(トム・ヨーク本人および『A Moon Shaped Pool』以来の付き合いとなるヒュー・ブラントとロンドン・コンテンポラリー・オーケストラのクワイア双方)の奇妙で多彩な美、アレンジの中に突如生じる覚醒/浄化の感覚等、独自なエッジを差し色することで「アルバム」としての総合的なバランスがとられている。『Tomorrow’s Modern Boxes』の濃い内省を経て、本作は身体性と精神性との深い調和を果たしている。
『サスペリア』ヴェネチア映画祭プレミアでの記者会見席上、トム・ヨークはモチーフの反復とそれが生むヒプノティックな効果を例にあげ、スタジオでの作業を「呪文を作る」行為になぞらえていた。反復を基本とするループやビートは現代のまじないであり、それに合わせて歌い踊るのは一種の儀式と言える。青白く光るスクリーンと絶え間なく流れる騒音に囲まれ、常に「オン」であるがゆえに逆に様々なものが掻き消され見失われてもいる現代。いっときでもいい、その呪縛を断ち切り、本質に目を向ける瞬間を生むために、トム・ヨークはまじないを作り続ける。
【タワレコ特典(国内盤対象)】先着:缶バッジ(2種のうち1種ランダム)
※特典運用は終了致しました。
数量限定Tシャツ付セットも登場!
オフィシャルサイト限定のデラックス2LP(40Pハードカバーブック付き/180g重量盤オレンジ・ヴァイナル仕様)も数量限定取扱!
〈フジロック'19〉出演!! トム・ヨークのソロ2作目が初CD化音源追加で再発>>>