Deep Purple(ディープ・パープル)のIan Gillan(イアン・ギラン)、2016年モスクワ公演を収めたライヴ作品
1969年にディープ・パープルに加入し、『ディープ・パープル・イン・ロック』(1970年)、『ファイアーボール』(1971年)、『マシン・ヘッド』(1972年)、1972年の来日公演の様子を収めた『ライヴ・イン・ジャパン』(1972年)など、黄金期と呼ばれる第2期ディープ・パープルのメンバーとして数々の伝説を残したイアン・ギラン。バンド脱退後はイアン・ギラン・バンド、ギラン、さらにブラック・サバスにも参加した彼は、1984年にディープ・パープルを再結成させ、1994年からはスティーヴ・モーズを迎えた体制で精力的に活動を続けている。
その一方で、ディープ・パープルがオフの際に、ソロとしても活動を行なっているイアンは、これまでソロ名義で5枚のスタジオ・アルバムをリリースし、ライヴも数多く実施。この『コントラクチュアル・オブリゲイション#1:ライヴ・イン・モスクワ』は、2016年11月に東ヨーロッパ8ヵ国で行なわれたツアーの中の11月15日のモスクワ公演を収めたものである。
イアンのバックを務めるのは同じくディープ・パープルのドン・エイリー(キーボード)と、彼のバンドのメンバーであるサイモン・マクブライド(ギター)、ローレンス・コトル(ベース)、ジョン・フィニガン(ドラム)の4人。さらに、コンダクターのスティーヴン・ベントリー・クレインの指揮のもと、各国で地元のオーケストラ隊と共演しているのもこのツアーの大きな見所となっていた。
イアンのソロ・アルバム『TOOLBOX』(1991年)に収録された「ハング・ミー・アウト・トゥ・ドライ」で幕を開けるこのライヴは、ソロ・アルバムからの曲もプレイはしているものの、大半の曲がディープ・パープルのナンバーとなっているのが大きな特徴だ。「ストレンジ・ウーマン」「レイジー」「スモーク・オン・ザ・ウォーター」「ハッシュ」「ブラック・ナイト」などの定番曲に加え、2000年以降の作品など、新旧を織り交ぜた楽曲がセレクトされている。さらに、かつてドン・エイリーが在籍していたレインボーの「治療不可(Difficult To Cure)」をカヴァーしているのも興味深い。
どの曲もディープ・パープルと同じようなスタイルで演奏しつつ、ストリングスが楽曲を美しく彩るようなかたちでプレイされており、パワフルでありながら、気品を感じさせる仕上がりとなっている。コーラス隊として参加しているイアンの娘のグレイス・ギラン、トリリウム等で知られる女性シンガーのアマンダ・サマーヴィルらによるハーモニーも印象的で、レイジー・レスターのブルース・ナンバーの「ユア・ゴナ・ルイン・ミー・ベイビー」のカヴァーではグレイスとイアンのデュエットも聴くことができる。
サイモン・マクブライドの技巧派プレイ、ジョン・ロード・スタイルを継承したドンのキーボード、そして、イアンのハリのある歌声も素晴らしく、本家のディープ・パープルとはひと味違う演奏は聴き応え満点。ディープ・パープルの楽曲、そしてイアン・ギランの新たな魅力を発見できる作品である。
タグ : ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)
掲載: 2019年07月25日 13:21