Jonathan Butler(ジョナサン・バトラー)心温まるクリスマス・ソング集『Christmas Together』
1961 年、南アフリカ共和国生まれの偉大なるスムース・ソウル・シンガー&ギタリスト、ジョナサン・バトラーによる心温まるクリスマス・ソング集。
アパルトヘイトの差別も厳しい時代に生まれ、貧しい環境から神童として世界に羽ばたいたジョナサン・バトラー。7歳でシンガーとして才能を認められ、僅か12 歳でSARI(South African Music Industry) アワードで、ベスト・ニュー・アーティストとなり、75 年に初レコーディング。すべては順風満帆のように見えてきましたが、早すぎる成功が時に人生に災いをもたらすことがあるように、ジョナサンの元にも、名声と富と共に悲劇があったと明かされます。家にオーディションに訪ねてきた者に性的虐待を受け、ドラックとアルコールにおぼれ、制御不能の状況に陥ったとのこと。痛み、苦しみ、そこからの復活に想像を超える困難が伴ったのはいうまでもないことになります。
しかし、そんな苦しみの中も通り抜けたジョナサンだからこそ、今の音楽があることをこの作品も物語ります。ジョナサンの創り出す音楽からは、いつも、ゴスペルのような温かみや慈しみといったものと、生命力に満ちた力強さが響いてきましたが、そこには、ジョナサンが歩いてきた道のりがあり、その経験が滲んできたと思われます。
本作は、キャリア2 度目の、クリスマス・ソング集。ソウルフルな世界をもつ、ジョナサン・バトラーの音楽と、クリスマスの音楽には、もともと親和性があるといえますが、デイヴ・コーズ、リック・ブラウン、カーク・ウェイラムなど、ジョナサンが心から信頼し、またジョナサンのことを心の底から思う相思相愛のミュージシャンも、集結した作品は特別。音楽の才能をもったからこそ、起こってしまったつらい事件。才能があったから、結びついた音楽的な仲間と経験。それらは、とても一筋縄で割り切れる明暗ではありませんが、このようなアーティストが創り上げる音楽には、特別なものがあることを、リスナーは、感じること必至です。特に、“Joy To The World”( もろびとこぞりて) で、“誰もに皆”という思いを“Joy to All the World”とアレンジし、バックグラウンド・ヴォーカルに反映させた崇高でスピリチュアルな美しさがあるM4 は可憐な中に、ぬくもりがこもった演奏。パンチのきいたファンキーなナンバーに、力強さを感じさせる場面あり、さわやかさを感じさせるアレンジに心を開放させる場面あり、高揚感を掻き立てる場面あり・・・ブラック・コンテンポラリーなアレンジとソウルがこもった演奏は一聴して耳馴染みよく、心をあたためるものがあります。
現在、バトラーは、様々な問題を抱える子供たちのためにJohnathan Butler Foundation を創立。“自らが貧しい環境から歩みはじめ、名声と悲劇も体験しながら、立ちあがってきたことを自らをもって示したい”。また“今困難でも、幸運は訪れる。幸運を手にすることによって、自分のような結果も生みだすことも可能だということを示していきたい”とのこと。また、その後には、同じような趣旨をもつ慈善団体、Lalela Foundation の初代Global Entertainment Ambassadorになり、妻と共に、芸術、音楽、文化をサポートするにいたっています。
2018年のバート・バカラック集もロング・セラーを記録中。現在58 歳。深まる音楽世界があります。
【収録曲】
1. Winter Wonderland 3:52
2. Mary Did You Know? feat. Sheléa 4:41
3. God Rest Ye Merry Gentlemen feat. Keiko Matsui 2:41
4. Joy to the World feat. Dave Koz 3:05
5. Deck the Halls feat. Gerald Albright 2:09
6. We Three Kings feat. Rick Braun 2:44
7. Love Is feat. Sheléa 3:43
8. O Come, O Come, Emmanuel 5:14
9. Away in a Manger feat. Dave Koz 2:52
10. Jingle Bells feat. Kirk Whalum 2:45
jonathan butler by raj naik
タグ : ソウル/R&B
掲載: 2019年10月09日 18:59