〈World Wide Tower〉高松丸亀町店 中南米音楽:QUIET~クワイエット~
Antonio Carlos Jobim『ストーン・フラワー』
ブラジル音楽の父、ジョビン。リオの国際空港が「アントニオ・カルロス・ジョビン国際空港」と改名されたり、国際的なスポーツの祭典のマスコットにその名を付けられたりと亡くなった後もブラジル国民に愛されている。数多の名作を世に送り出しているがこれはジョビンの中でも”静”が際立つアルバム。ショーロ、マラカトゥ、サンバ、そこには一貫して仄暗さを感じる。一人の夜に聴きたい一枚。「Brazil」はCM等でもおなじみの曲だが、ここでは7分オーバーの大作となっている。全編インストかと思いきやここで少し遅れてジョビンの歌が入ってくる。「歌うんかーい」は私の心の声。(1970年)
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Joao Gilberto『三月の水』
ジョアン・ジルベルトのギターと歌によってボサノヴァはこの世に生を受けた。ボサノヴァとはジョアン・ジルベルトのこと。これはギターと歌、そして少しのパーカッションのみという一切の無駄を省いたおごそかで神秘的なアルバム。ブラジルの雨季の風景を歌った表題曲「三月の水」の詩は一見とても素朴に思えるけれど、この世のありとあらゆる全てのものが詰まっている。雨、小石、棒切れ。人生の約束、絶望の終わり、心の喜び。「静寂より美しい音」がここにある。(1973年)
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Sebastian Macchi、他『Luz de Agua : Poemas de Juan L Ortiz<限定盤>』
アルゼンチン、パラナの詩人フアン・L・オルティスの詩に同郷のピアニスト、セバスティアン・マッキが曲をつけた、アルゼンチン音楽史に燦然と輝く金字塔。心を揺さぶるピアノ、繊細なアコースティックギター、幻想的なコントラバス、伸びやかなチェロ。それらが美しい刺繍細工のように心の中で織り重ねられていく。コンテンポラリー・フォルクローレを知るためにはまず手に取りたい一枚。(2005年)
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伊藤ゴロー『GLASHAUS』
映画やドラマ音楽など多岐にわたって活躍する作・編曲家/ギタリスト、伊藤ゴロー。ロック〜クラシック〜ジャズとジャンルを縦横無尽に行き来し、音楽を探求する。これは本人名義作第2弾で、クラシック・ギターを軸にした書き下ろしのインスト集。架空の国の切手が貼られたようなジャケットが象徴するように無国籍で抒情的な音の物語が広がる。どこまでも静かで甘美なギター、そこに交わるアンドレ・メマーリのピアノやジャキス・モレレンバウムのチェロ。まるで時が止まったような、世界から隔絶されたような、心地よい孤独がそこにある。(2012年)
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Quique Sinesi『小さな音のことづて』
アルゼンチンを代表するギタリスト、キケ・シネシ。フォルクローレとタンゴをベースに、ジャズやクラシックなどが融合するその洗練を極めた音楽は唯一無二。美しく繊細な南米伝統のメロディをギターやバンジョー、伝統楽器ロンロコやチャンゴなどで細やかに、時にダイナミックに奏でる。キケの音楽は、彼が見たものや感じたことが織りなされてできている。目を閉じればアルゼンチンの自然やそこに生活する人々が浮かんでくるよう。それはまるで音のことづて。(2018年)
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高松丸亀町店ワールドコーナー紹介
日本のミナス、高松。愛情をこめて選んだ良作が所狭しと並んでいます。四国や岡山のライブ情報も掲示。あそこに行けば何かがある、そんな売場を目指しています。
担当者/作品レビュー執筆者紹介
高松丸亀町店 バイヤー: 岡本 美帆
2012年、タワーレコード高松丸亀町店のオープニングスタッフとして入社。10代のころ、ナラ・レオンに出会い私の全てが狂い始めました。20代のころ、夢はただ二つ。ブラジル人になること。マルコス・ヴァーリと結婚すること。世界を知りたくてアフリカ・ニジェールで暮らすこと2年。今はここ高松で、良い音楽を少しでも多くの方に聴いてもらいたいと奮闘中。
サンバ、ボサノヴァ、タンゴ。だけじゃない南米音楽。ジャンルや国境を越え、あらゆる美しいものが融合した良作がたくさんあります。幸せを感じたときはその気持ちを膨らませ、苦しい時はその気持ちを柔らかく包み込んでくれる、私たちの日常に寄り添い人生に少しの彩りを添える良質な音楽。ずっとそばに置いておきたい、そんな作品にきっと出合えます。
掲載: 2019年11月18日 12:21