WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.60
アート・ファーマー&ベニー・ゴルソン『ミート・ザ・ジャズテット』(1960)
アート・ファーマー(tp)
ベニー・ゴルソン(ts)
カーティス・フラー(tb)
マッコイ・タイナー(p)
アディソン・ファーマー(b)
レックス・ハンフリーズ(ds)
1960年2月6、9&10日、ニューヨークにて録音
曲目:
01.セレナータ
02.イット・エイント・ネセサリー・ソー
03.アヴァロン
04.アイ・リメンバー・クリフォード
05.ブルース・マーチ
06.イッツ・オールライト・ウイズ・ミー
07.パーク・アベニュー・プティ
08.モックス・ニックス
10.キラー・ジョー
【アルバム紹介】
1.ファーマー、ゴルソン双頭コンボ、“ザ・ジャズテット”の初アルバム
2.クインテット(五重奏団)より厚みのあるセクステット(六重奏団)での力強いサウンド
3. “キラー・ジョー”始めベニー・ゴルソンの名曲が充実
前回のアート・ファーマーのアルバム『モダン・アート』紹介の際、最後に触れましたが、ファーマーがその参加メンバーであるテナー・サックスのベニー・ゴルソンとともに組んだ双頭コンボが“ザ・ジャズテット”です。そしてその初アルバムとして世に出たのが本作となります。
この“ザ・ジャズテット”の編成はセクステット(六重奏団)で、通常のジャズのクインテット(五重奏団)にトロンボーンを加えたものとなり、ホーンがより厚みを増して力強いサウンドが特徴となっています。
全10曲収録されている楽曲のうち、作曲の才能に秀でたベニー・ゴルソンのオリジナル曲が4曲、そしてアート・ファーマーのオリジナル曲が1曲あり、残り半分はジョージ・ガーシュウィン、コール・ポーターらのスタンダード・ナンバーで構成されています。
ゴルソンのオリジナルは特筆すべき名曲ぞろいで、バラードの“アイ・リメンバー・クリフォード”、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのレパートリーでおなじみの“ブルース・マーチ”、ナイトリーなバラード“パーク・アベニュー・プティ”、そしてクインシー・ジョーンズも取り上げた“キラー・ジョー”のザ・ジャズテットでの名演が聴けます。また、ファーマーのオリジナル“モックス・ニックス”は前回の『モダン・アート』の1曲目でも取り上げていたナンバーです。
参加メンバーはトロンボーンには名手カーティス・フラー、そしてピアノにはジョン・コルトレーン・カルテット参加前の若きマッコイ・タイナー、ベースはファーマーの双子の兄弟、アディソン・ファーマー、ドラムスには実力派レックス・ハンフリーズというラインナップ。しかし、このメンバーはこの7か月後にレコーディングされたグループのセカンド・アルバムの時点ではファーマー、ゴルソンの2人以外はすべて替わっており、“ザ・ジャズテット”は1962年までの活動期間の中で凄いスピードでメンバー・チェンジを繰り返すことになってゆきます。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
ゴルソンの代表曲のひとつ“キラー・ジョー”。
本作に収録のこの曲は当時シングル・リリースされ、B面のカップリング曲は“モックス・ニックス”で、4万枚のセールスという大ヒットを記録しました。
まず40秒ほど、ゴルソンの曲紹介のナレーションが入り、クールなビート、コード進行の上で、キャッチーなテーマが展開されてゆきます。ここではアート・ファーマーはミュート・トランペットをプレイしており、それが都会的なムードを醸し出します。
そしてソロに入ると、ファーマー、ゴルソン、フラー、タイナーの順で演奏されますが、テーマが回帰した後に「キラー・ジョー!」と一言ナレーションが入り、そのままフェイド・アウトで終了となります。
ベニー・ゴルソンは2020年に91歳でいまなお現役で活動しています。
余談ですが、2004年のスティーヴン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演のヒューマン・ドラマ映画『ターミナル』でストーリーのキーになる重要な役で出演しており、ゴルソンの名前を聞くとこの映画をふと思い出す人は多いかもしれません。
SHM-CD国内盤(一般普及盤)
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2020年01月17日 10:00