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金野吉晃によるプロジェクト、ONNYKの作品『EARLY ELECTRONIC WORKS』

ONNYK『EARLY ELECTRONIC WORKS』

即興演奏の世界では知る人ぞ知る東北のフィクサーであり、「第五列」などの名義で1970年代から活動してきた重鎮。以前、彼が運営するレーベルAllelopathyのCDを紹介したが、他にも海外の演奏家との共演も含め、膨大な演奏の記録が残っており、彼は現在その資料整理中である。その中で発掘された最も初期の電子音楽をリリース!アカデミズムとは無縁の手軽な機材で、興味のおもむくままに繰り出されるチープな電子音は、しかしそれがゆえに純粋な面白さに満ちている。

もう亡くなった友人が、国産民生機として最初期のシンセ、ローランドのSH1000を貸してくれたのは18歳の時だった。「変な音」を出したかった者にはシンセは福音だった。その意味で私は通常の楽器や、日用品からも如何に変な音を出すかを、昼夜問わず研究して、家族に迷惑をかけていたのである。私は一回だけ多重録音できるラジカセを使って色々実験を始めた。また私は当時、複数のエフェクターをつないだマイクをハウリングさせることが好きだった。エフェクターを操作する事でハウリングがパターン化して変化する。こうして、単音しか出ないシンセサイザーのピンポン録音と、ハウリングパターンのカセットを多数作った。

トラック1は、それらをミックスしたものだが、20~21歳の頃にやった。完全に左右のトラックの音が違うのは、ミキサーが無かったので、一つのレコーダの左右のチャンネルに同時に違う音を入れ、モノラルで聴けばいいやという安易な発想だったのだ。トラック2は80年代にはいってから、エフェクターのループをまたやったものだ。器材が増えたので操作できるところが増えた。マイクは使わなくなった。ライン録りだから「きれい」にとれる。しかし、以前の方法で起きていたマイクの位置、角度などによる微妙な変化が失われた。自分の位置や姿勢の違いでも変化が出たのだ。

当時は全てアナログ機器。ループを作るにもエフェクターの繋ぎ方で変わる。どうすれば複雑な変化が出るかを、繋ぎの順番を変えて探求した。エフェクターのループは、演奏というべき要素とインスタレーション的要素がある。エフェクターのツマミをいじくることが「演奏」だし、放置しても終わらないのは後者だ。しかし触れなくても勝手に変化していく。それはやはり電池の消耗によるだろう。そういう「鑑賞」の仕方もある。


【収録曲】
1.Electronnyk 1976
2.Electronnyk 1983


〈OMEGA POINT〉2019年発売タイトル

掲載: 2020年01月20日 11:59