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渋谷店AON - Adult Oriented NewWave -:MASTERPIECE

AON(Adult Oriented NewWave)~大人のための80’sミュージック~という新たな切り口のもとに、ニューウェイヴ世代の音楽を聴き直してみましょう。

The Style Council『Our Favourite Shop』

AONという造語を説明するときに最も相応しいテキストは、ポール・ウェラーとミック・タルボットという真のモッズ2人が組んだスタカンの初期作に違いない。『Cafe Bleu』もマストだが、ここではより間口の広いサウンドを提示した本作を推そう。小粋なボッサ②、つんのめり気味ファンク④、静謐な弦楽四重奏が美しい⑤、歌謡曲ばりの哀愁ナンバー⑦、洒落たシャンソン風の⑨、UKブルーアイドソウルの頂点ともいうべき名曲⑩、多幸感に満ちたポップ・チューン⑪、ラテン・ジャズ調⑫、モッドなオルガン・インスト⑬、そしてスタカンを代表する2大名曲⑭⑮。この多彩すぎる内容は、まさにヒップな音楽の雑貨店Our Favourite Shopである。

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Everything But The Girl『Language Of Life』

名匠トミー・リピューマをプロデュースに迎えたLA録音の5作目。ぎりぎり80年代ではない90年のリリースながら、AONとしてのEBTGでは最高傑作なのでぜひ紹介したい。ベン・ワットの敬愛するスタン・ゲッツ(!)を筆頭に、マイケル・ブレッカーやオマー・ハキムなどジャズ界の超一流プレイヤーたちをバックに迎えたサウンドは洗練の極み。名工ダグ・サックスによる緻密なマスタリングも見事で、いま聴いても優れた音質。スムースで透明感のある①、スタイリッシュなアップ②、夜の抒情を湛えた⑤、そしてゲッツのサックスがあまりにも美しい⑩他、佳曲多数。

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Naked Eyes『Burning Bridges : Special Edition』

ピート・バーン&ロブ・フィッシャーの2人組によるデビュー作で、80年代UKの必殺仕事人トニー・マンスフィールドがプロデュースを請け負った名作。基調はエレ・ポップだが人肌のぬくもりを感じさせるソフト&メロウなサウンド・プロダクションはまさにAON的。バート・バカラック作品を見事にモダン・チューンアップさせた④がアメリカでもヒットしたおかげで世間では一発屋だと思われがちだが、それは大間違い。夜を駆け抜けるようなメロディが印象的な③や、トニマンの遊び心とムーディーさが拮抗する⑨、ソウルフルな艶気も漂うスマッシュヒット⑫など、アルバム全編そつなくクオリティーが高い。

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Prefab Sprout『Kings Of Rock 'N' Roll : The Best Of』

まるで半世紀前の銀幕の挿入歌のようにも、半世紀経った未来の惑星旅行のBGMのようにも聴こえる、真にタイムレスでロマンティックな音楽を創造する名グループのベスト盤。1st~6thアルバムからセレクトされた粒揃いの全37曲というヴォリュームもさることながら、しっかりリマスタリングも施された2枚組なので入門編にも最適。けれどなによりも特筆すべきは、CDでは本盤でしか聴けないレア音源が3曲も収録されていることだ。アルバム未収録のシングルB面曲”Nero The Zero"、”Donna Summer"は初のCD音源化、また”Yearning Loins"も入手困難曲。この3曲のためだけでも必携と断言したい。

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Aztec Camera『High Land, Hard Rain』

いわゆる<ネオアコ>と呼ばれるアーティストに共通する特徴として、DIY精神というパンク的な姿勢を確実に継承しつつも、それとは対極にあるメロディー重視の曲構成や、フォークやソウル、ジャズ、ラテンなど、つまりはパンクが否定した広範な要素を含んだ豊潤な音楽性、そして青春期特有の憤りや屈折、あるいはひたむきさといったナイーヴな感性が凝縮されたような若々しいサウンドなどが挙げられるが、アズテックカメラのこのデビュー作にはそれらの全てが完璧なほど見事に詰め込まれている。大人びているのに、どこまでも青々しい。ネオアコのみならずAONとしても一つの理想形ともいえるアルバム。

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渋谷店AONコーナー紹介


80年代のニューウェイヴやポスト・パンクというと、どこか尖ってアナーキーで、それ以前の時代の音楽とは隔絶した若者的サウンドを想像しがちですが、実際のところは大人の鑑賞にも耐え得る素晴らしく良質な音楽の宝庫でもあったわけです。いまこそAON(Adult Oriented NewWave)という新たな切り口のもとに、ニューウェイヴ世代の大人ミュージックを聴き直してみましょう。


担当者/作品レビュー執筆者紹介


渋谷店 洋楽バイヤー: 北爪啓之


1999年、新宿店入社。洋楽フロアで主にリイシュー物やオールディーズ、はじっこの方のロックを担当。2004年に渋谷店に異動後も洋楽バイヤー一筋(邦楽も好きなんですが)。”フリーメタル”、”カフェ・プログレッシヴ”、”シチュー系”など、ほぼ思いつきで新ジャンルを提唱するも残念ながら世間には浸透せず。それゆえ、これまた私の造語である”AON”だけはどうにか皆様に馴染んでいただきたい思い。 ビーチボーイズではマイク・ラブ、はっぴいえんどでは松本隆、放課後ティータイムではムギちゃん派。なおプライベートでは古本屋巡りと酒場巡礼が趣味。好きな作家は谷崎潤一郎、江戸川乱歩、中井英夫、長嶋有など。趣味の合いそうな人、連絡お待ちしております。


掲載: 2020年05月08日 13:38