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Sam Wilson(サム・ウィルソン)|若きジャズ・ギターのミューズによる繊細で心に響くデビュー・アルバム『イントゥ・ア・ハート~ギターと私』

Sam Wilson(サム・ウィルソン)『イントゥ・ア・ハート~ギターと私』

サム・ウィルソンは、カナダの女流ギタリストである。おそらく、今回その存在を知る人が大半だろう。しかし、ジャズ・ギターの真髄をきっちりと知り、周りを見渡して呼吸しながら、今の担い手であることをしなやかに主張するその存在は広く知られてしかるべきだ。自然体と言いたくなるソロによる演奏が、12曲。その成り立については、なんと大胆なと感じる人もいるかもしれない。だって、今日日、そんな潔い設定でアルバムをリリースするギタリストなどそうはいない。

実は、彼女のデビュー作『In to Heart』(自主リリースで、2017年の録音)は完全ソロによる5曲入りのEPだった。ここでの、6,7,9,10,12はそこに収められていた彼女のオリジナル曲を再演したもの。そして、今作のためにウィルソンはさらにオリジナルの4曲(1,2,4,11)と視点アリの他者のジャズ曲のカヴァーを3つ~それらは、彼女の楽曲趣味やジャズ観を直裁に伝えるものになっていると言える~~を用意し、楽器と一体化し、様々なストーリーとジャズ観を思うまま紡ぐギタリスト像をしっかりと打ち出している。

ちなみに、彼女が弾いているギターは、ギブソンのセミ・アコースティック型のエレクトリック・ギターのES 339(著名モデルであるES 335を少し小型/軽量化したモデル)。そして、ダダリオのフラット・ワウンド弦を張り、アンプはフェンダーのデラックスを使っている。アンプはクリーンなセッティングで、基本エフェクターは用いていないとのことだ。

シンプルな設定が取られているものの、ここに認められる演奏は雄弁にして、多大な誘いを持つ。ウィルソンは、変わらなくてもいいジャズの技法や意味を今の詞的な文様の描き方や情緒を介して瑞々しく表出することを成就。ああ、なんと素敵なこと!かような才を持つ彼女は、今のジャズとしてもっとも必要なものを以下のように考えている。 「現在のジャズ音楽にとって最も重要な要素は、偉大な人々と伝統を尊重しつつ、変化を受け入れることです」。

佐藤英輔


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「私に大きなインスピレーションを与えた最初のミュージシャンは、ピンク・フロイドのデイヴィッド・ギルモアでした。私は多感な時期にピンク・フロイドをたくさん聞きました。その後、ウェスモンゴメリー、ケニー・バレル、ジム・ホール、エミリー・レムラー、マイケル・ヘッジス(以上、ギター)、アビシャイ・コーエン、エスペランサ・スポルディングといったアーティストたちからインスピレーションを受けています。そして、私にインスピレーションを与えるアーティストのリストはどんどん増え続けています」-サム・ウィルソン

・国内盤CD


【パーソネル】
サム・ウィルソンguitar
録音:2020年/6月28・29日

【収録曲】
1.イナーシャ
2.レイスウェイ・スピン
3.ベアトリス by Sam Rivers
4.サザン・リンボ
5.ピース by Horace Silver
6.グッドバイ・オーガスト
7.モーニング・モチベーション
8.アローン・トゥゲザー by Arthur Schwartz
9.イントゥ・ア・ハート
10.レット・イット・リーヴ
11.ハリー・アップ・アンド・ウェイト
12.エアポート・コンテンプレーション

掲載: 2020年10月01日 16:48