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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.110

マイルス・デイヴィス『クッキン』(1957)

MDC

マイルス・デイヴィス(tp)
ジョン・コルトレーン(ts)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

1956年10月26日、ニュージャージーにて録音

曲目:
01.マイ・ファニー・ヴァレンタイン
02.ブルース・バイ・ファイヴ
03.エアジン
04.チューン・アップ~ホエン・ライツ・アー・ロウ

【アルバム紹介】
1.マラソン・セッション4部作中、最初にリリースされたアルバム
2.マイルス・デイヴィスによる名曲“マイ・ファニー・ヴァレンタイン”初演を収録
3.テナーのジョン・コルトレーンの成長著しいプレイが光る

2021年はジャズ界の帝王マイルス・デイヴィスにとって生誕95年、没後30年。
今回から4回にわたって、マラソン・セッションとして有名な4部作を紹介いたします。
よくあるディスコグラフィーでは録音データ順で紹介されることが多いですが、ここではリリース順に追っていくことにいたします。

1955年に大手のコロムビア・レコードと契約したマイルス・デイヴィスがそれまで所属していたプレスティッジ・レーベルでの契約履行のため、アルバム4枚分の楽曲を1956年5月11日と10月26日に2日間で強行レコーディング。それがマラソン・セッションの別称で呼ばれる所以となりました。しかもすべて演奏はファースト・テイクだったと言われています。

4部作中最初にリリースされたのは2日目の10月26日に録音された音源のみで構成された『クッキン』でした。「結局のところ、俺たちがしたことは、スタジオに入り、(スタンダード曲を)料理したのさ」というマイルスの言葉がタイトルの由来になっています。

有名なナンバー“マイ・ファニー・ヴァレンタイン”はマイルス自身はその後も何度かレコーディングしていますが、ここでの演奏が自身の同曲の初演にあたります。
メンバーは1955年に初吹き込みをしたマイルス“オリジナル”クインテットの面々でピアノはレッド・ガーランド、ベースはポール・チェンバース、ドラムスはフィリー・ジョー・ジョーンズ、そしてテナー・サックスは当初目星をつけていたソニー・ロリンズがつかまらず、ジョン・コルトレーンを起用。
コルトレーンはマラソン・セッションのこの2日間のレコーディングで、見事なプレイを聴かせるサックスマンとして著しく成長することになりました。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
イントロからすべてがパーフェクトな“マイ・ファニー・ヴァレンタイン”。

マイルス・デイヴィスにとって、この名曲の初の演奏となったのが本作のテイク。
同曲はチェット・ベイカーによるヴォーカル・バージョンも非常に有名ですが、インスト・バージョンの名演といえばこの演奏がおすすめです。
ただし、ここでの演奏はクインテットではなく、カルテットでの演奏になっており、ジョン・コルトレーンはお休みになっています。
レッド・ガーランドによるリリカルでジェントルなイントロはテーマ直前でマイナー調に転じ、そこから始まるマイルスのミュート・トランペットによるプレイは絶品です。テーマ・メロディをまんま吹くのではなく、マイルスならでは歌いまわしでじっくり聴かせてゆきます。
その後テンポ・アップし、ピアノ・ソロが始まり、ガーランドのスインギーなプレイが続きます。再びバラード調になり、テーマに回帰し、イントロのピアノのフレーズも顔を出しエンディング。聴き終わった後、胸の奥がジーンと熱くなっているような、心に響く名演となっています。
マラソンは次回“リラクシン”にタスキをつないでゆきます。

国内盤SHM-CD(一般普及盤)

 

国内盤UHQCD

 

輸入盤CD

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2021年01月08日 10:00