WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.269
デクスター・ゴードン『ゲッティン・アラウンド』(1965)
デクスター・ゴードン(ts)
ボビー・ハッチャーソン(vib)
バリー・ハリス(p)
ボブ・クランショウ(b)
ビリー・ヒギンズ(ds)
1965年5月28日、29日、ニュージャージーにて録音
曲目(LP初発売時):
01.黒いオルフェ
02.フー・キャン・アイ・ターン・トゥ
03.ハートエイクス
04.シャイニー・ストッキングス
05.エヴリバディズ・サムバディズ・フール
06.ル・クワフール
【アルバム紹介】
1.名テナーマンの一人、デクスター・ゴードンのブルーノート・レーベルでのリーダー・アルバム
2.ヨーロッパに移住後、 一時的に帰国してレコーディングされた一作
3.ヴィブラフォンのボビー・ハッチャーソンを加えた異色のクインテット編成
クインテット編成の名盤、今回は名テナーマンの一人、デクスター・ゴードンのブルーノート・レーベルでのリーダー・アルバムを取り上げます。
どっしりとした存在感のあるプレイで知られたデクスター・ゴードンですが、1962年以降、14年間活動の拠点をヨーロッパに移しており、そんな中、アメリカに一時的に帰国した際に本作はレコーディングされました。非常にリラックスした印象のプレイで全編聴かせているのも本作の特徴になっています。
編成はクインテットですが、ヴィブラフォンの入った一風変わった編成になっており、メンバーにはヴィブラフォンはこの当時新主流派として頭角を現してきていたボビー・ハッチャーソン、ピアノには渋好みの名手バリー・ハリス、そして、ベースにはボブ・クランショウ、ドラムスにはビリー・ヒギンズという顔ぶれになっています。
楽曲はボッサ系名スタンダードの“黒いオルフェ”、ロマンティックなスタンダード・チューン“フー・キャン・アイ・ターン・トゥ”、ベイシー楽団のレパートリーでお馴染み“シャイニー・ストッキングス”などに加えてデクスター・ゴードンのオリジナル“ル・クワフール”という構成です。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
ボッサ・スタンダード“黒いオルフェ”。
この曲はブラジルのギタリスト/作曲家のルイス・ボンファが映画『黒いオルフェ』のために作曲したナンバーで、“カーニバルの朝”とも呼ばれている名曲で数々のシンガーやミュージシャンによってカヴァーされています。
まずイントロはドラムスからゆったりとしたボッサ・ビートが導かれ、哀愁美あふれる名テーマをテナー・サックスとヴィブラフォンがユニゾンで奏でてゆきます。テーマが提示された後はデクスター・ゴードンのテナー・サックスによる情感豊かなソロへと移ります。続いて、ボビー・ハッチャーソンのヴィブラフォンがキラキラとした音色を生かしながら、歌い上げるようにフレーズを散りばめます。最後のソロはバリー・ハリスのピアノに受け継がれ、中低音域を鳴らしながら情緒あふれるプレイで魅了します。そして、テーマに回帰し、エンディングとなります。
デクスター・ゴードンは先述の通り、本作をレコーディングした頃はヨーロッパに移住しており、本作とあと1枚をブルーノートに残す以外はほとんどヨーロッパの現地レーベルにリーダー作を残しています。そのレーベルは“北欧のブルーノート”と呼ばれたデンマークのコペンハーゲンを拠点におくスティープルチェイスで、60年代半ばから70年代半ばにかけてのデクスター・ゴードンの充実した演奏をじっくり聴くことができます。
国内盤SHM-CD
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2024年03月29日 10:00