WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.288
ロンネル・ブライト『ザ・ロンネル・ブライト・トリオ』(1958)
ロンネル・ブライト(p)
リチャード・デイヴィス(b)
アート・モーガン(ds)
1958年6月5日、 パリ録音
曲目:
01.セイル・エム
02.昔はよかったね
03.ジョニー・ベイトのブルース
04.RとRのグルーヴ
05.ザ・チャンプ
06.イージー・リスニング
07.サラを追いかけて
08.ドクソロジー
【アルバム紹介】
1.マニアの間で人気の高いピアノ・トリオ作
2.50年代、サラ・ヴォーンの伴奏者として欧州ツアーで訪れたパリで録音
3.ベースには盟友リチャード・デイヴィスが参加
今回紹介する一枚は、マニアの間で人気の高い、フランスのポリドールからリリースされたピアノ・トリオ・アルバムです。ピアニストの名はロンネル・ブライト。スインギーでタッチの明快なセンスのいいピアノを聴かせるピアニストです。
1930年にシカゴで生まれ、その地で育ったロンネル・ブライトは幼少の頃からピアノを始め、8歳の時には神童と呼ばれ、14歳でシンフォニー・オーケストラと共演する等、元々はクラシック畑のピアニストとして腕をみがいていましたが、いつしかジャズの道へと方向転換しました。
そのキャリアの中では、50年代半ばにニューヨークに出てから、多くのシンガーとの共演で知られる存在になってゆきました。1957年頃にサラ・ヴォーンと出会い、その伴奏者として、多くの仕事をこなしました。本作は、そんな時代に、ヨーロッパにツアーで訪れた際にパリでレコーディングされた一作です。
ベースには、シカゴからニューヨークに出る際に力になってくれた盟友リチャード・デイヴィス、ドラムスにはアート・モーガンというトリオの顔ぶれで、自作のオリジナル(1,4、7、8)、デューク・エリントンの名曲(2)、ディジー・ガレスピーのナンバー(5)、ナット・キング・コール作のブルース(6)などで構成された内容になっています。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
明快なタッチの光るオリジナル“セイル・エム”。
パリという異国の地でのレコ―ディングによる自身のリーダー作ということもあり、オリジナル4曲を収録しているぐらいなので、かなりの本気度。そんな印象さえする本作はまずこの1曲目に収録のこのナンバーを聴いてみましょう。
本作に収録されている楽曲は短く4分台の曲が多く、1曲目にいたっては3分40秒ほどの演奏時間。その分、展開も冗長にならずスッキリしたものになっています。
スインギーで小気味良いテンポでまずテーマが提示されます。その後にピアノ・ソロへと移りますが、スイングするビートの上をセンス抜群のフレージングで魅了してゆきます。ソロを終えるとブレイクを挟みながら、バックのウォーキング・ベースを強調した流れとなり、続いてそれがドラム・ソロへとつながって進みます。やがてサラリとテーマに回帰し、エンディングへと向かいます。
ロンネル・ブライトのリーダー作は本作以降、実は一作もなく、ある意味、このピアニストの本質を知るということにおいては、本作が唯一の代表盤ということになるのでしょう。かくしてレコーディングこそ、少ないですが、音楽活動は続けていたと思われ、2021年に91歳で亡くなっています。本作を聴いてみると、90年代あたりに、その時代の若手のベーシストやドラマーとトリオを組んでレコーディングしていたらどんなアルバムを作っていただろう、そんなことを思わせられるピアニストです。
国内盤SHM-CD
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2024年08月09日 10:00