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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.290

ピム・ヤコブス・トリオ『カム・フライ・ウィズ・ミー』(1982)

PJ

ピム・ヤコブス(p)
ルード・ヤコブス(b)
ピーター・イプマ(ds)

1982年オランダ、ヒルヴァーシュムにて録音

曲目:
01.アイヴ・ガット・ザ・ワールド・オン・ア・ストリング
02.スプリング・ウィル・ビー・ア・リトル・レイト・ジス・イヤー
03.カム・フライ・ウィズ・ミー
04.枯葉
05.フー・キャン・アイ・ターン・トゥ
06.アイ・ラヴ・ユー
07.身も心も
08.サルトリー・セレナーデ

【アルバム紹介】
1.オランダの名ピアニストが1982年にリリースした傑作
2.青空のもと、ジャンボ・ジェットをバックにした名ジャケ
3.選曲は全曲スタンダード・ナンバー

今回はヨーロッパのピアノ・トリオの名盤をご紹介いたします。オランダの名ピアニスト、ピム・ヤコブスの傑作です。

1934年に生まれたピム・ヤコブスは50年代から自身のピアノ・トリオで演奏活動を始め、1960年に、オランダの歌姫“クール・ヴォイス”のリタ・ライスと結婚し、行動をともにしたことで知られています。

本作は時代としてはフュージョン全盛の中にあって、80年代初頭にレコーディングされたセンスのいいアコースティックなピアノ・トリオ・アルバムで、青空のもと、ジャンボ・ジェットをバックにしたジャケットもいい雰囲気です。
とりあげている楽曲はすべてスタンダード・ナンバーで、非常に聴きやすい内容になっており、ベースは1938年生まれの実弟のルード・ヤコブス、ドラムスは1942年生まれの同じオランダのピーター・イプマという顔ぶれになっています。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
爽快さが光るタイトル・チューン“カム・フライ・ウィズ・ミー”。

この曲は1958年にフランク・シナトラのために書かれ、同名のアルバムに収録された1曲です。シナトラ版でこの曲に馴染みのある方も多いことと思われます。作曲はジミー・ヴァン・ヒューゼン、作詞がサミー・カーンといったスンダ―ド作曲家・作詞家コンピによるものです。
曲は高音域のピアノによる歯切れのいい刻みで始まり、ブラシワークによるドラムスが入ってきて、ベースも加わり、ミディアム・テンポのいい雰囲気で、テーマ・メロディを奏で始めます。シンプルでストレートな解釈での良さが前面に出ているのがわかります。テーマの提示を終えると、ちょっとしたブレイクを挟み、ドラムスはスティックに持ち替え、ピアノ・ソロに移ります。随所にセンスの良さが光るフレーズ選びが見事で、リラックスしながら表情豊かに進行してゆきます。適度な盛り上がりをみせながらも再びテーマに回帰すると、ドラムスは再びブラシワークとなり、丁寧に弾きこんでいきますが、その後は意外や意外、フェイド・アウトで曲は終わります。
80年代に録音されているだけに、50年代、60年代のジャズ全盛期の音とはまた違った魅力があり、ヨーロピアン・テイストならでは気品みたいなものが感じられる演奏になっています。アメリカのジャズがどこかブルース・フィーリングを持っているのが特徴であるのに対し、ヨーロッパのジャズはクラシック音楽が根底にあることもあり、明快でクセのない演奏で聴く者を魅了します。本作は録音の良さもセールス・ポイントのひとつになっていて、聴いていて爽快な気分になれる、そんな逸品です。

国内盤SHM-CD

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2024年08月23日 10:00