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“詩人”だけじゃない!谷川俊太郎の多岐に渡る仕事の歴史と生き方に触れる

詩人なんて呼ばれて

今年11月13日に亡くなった、詩人・谷川俊太郎。教科書に掲載された「朝のリレー」や合唱曲にもなっている「春に」など、幅広い世代の心に残る言葉を生み出してきた名詩人だ。誰もが“詩人”としてのイメージを抱く谷川だが、じつは仕事の内容が思いのほか多岐にわたっていたことをご存知だろうか。

●伝え続けた“言葉”は詩のみならず

萩原朔太郎賞や読売文学賞、三好達治賞など名立たる文学賞に輝いた谷川の名声は、国内だけにとどまらない。2011年に中国の詩歌の民間最高賞「中坤国際詩歌賞」、2022年には北マケドニアで毎年開催されるストルガ詩祭の金冠賞を受賞。輝かしい功績からも、谷川は世界中で高い評価を得ている詩人のひとりと言える。

一方で、1962年には『月火水木金土日のうた』で日本レコード大賞で作詞賞を受賞した経歴も持つ。世代を超えて愛される童謡やアニメ主題歌で、実は谷川が作詞を手掛けていた有名な作品は多い。たとえば手塚治虫原作のアニメ『鉄腕アトム』主題歌や、スタジオジブリ作品『ハウルの動く城』の主題歌『世界の約束』が代表例だ。

意外な経歴としては、“スヌーピー”で有名なチャールズ・M・シュルツの漫画「ピーナッツ」の翻訳も挙げられる。全作品が収録されている「完全版ピーナッツ全集 スヌーピー1950~2000」では、未訳の約2000作も訳出。1967年から長きに渡り、スヌーピーと仲間たちとの世界を日本に伝えてきた。

また、絵本作家レオ・レオニの絵本で有名な「スイミー」も谷川が翻訳を担当。1975年には「マザー・グースのうた」で日本翻訳文化賞を受賞しており、谷川は詩人のみならず翻訳家としても活動の幅を広めたのだ。

そんな谷川の創作生活に注目した書籍「詩人なんてよばれて」では、インタビューの中で「詩人になろうなんて、まるで考えていなかった」と衝撃的な言葉が飛び出している。谷川いわく高校3年生の頃から詩を書き留めていたが、“受験からの逃避”のようなものだったという。


なんとも意外な詩人・谷川俊太郎の誕生秘話だが、詩に対する考え方や迫りくる老いと死についての想いなど、谷川本人の口から語られる言葉はいずれも貴重なものばかり。多彩な作品を交えて振り返る谷川の人生に、誰もが共感を覚えるのではないだろうか。

谷川が創り出した作品は、詩・歌・絵本などさまざまな形で身近な生活に溶け込んでいる。谷川の言葉は、これからも人々の心を動かし続けていくに違いない。

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掲載: 2024年12月10日 17:30