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第3回 ─ カリブの熱風、TK

BETTY WRIGHT

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2005/03/24   19:00
更新
2005/03/24   19:14
ソース
『bounce』 262号(2005/2/25)
テキスト
文/林 剛

 マイアミ・ソウルを代表する女性アーティストといえば、やはりこの人だろう、ベティ・ライト。53年にマイアミで生まれ、3歳からエコーズ・オブ・ジョイというファミリー・ゴスペル・グループに参加、話すよりも先に歌っていたという。幼い頃から数学の天才にしてIQが超人並みの167……ということで、ラジオ番組の〈曲当てクイズ〉で優勝した彼女は、賞品のレコードを貰いに向かった地元のレコ屋で曲を口ずさんでいたところをプロデューサーのウィリー・クラークにスカウトされた。この時13歳。直後に彼女は、クラークとクラレンス・リードのもとで初録音をする。そして2年後の68年にはアルストンに迎え入れられ、“Girls Can't Do What The Guys Do”が初の全米ヒット。10代の少女の恋愛観を可憐かつディープに歌ってみせ、71年には代表曲“Clean Up Woman”が大ヒット。以後もクラーク&リードの援護体制のもと“Baby Sitter”“Secretary”など、女性の側に立った歌を、キワドイ意味も込めつつ披露していった。

 70年代中期、TKが一連のディスコ曲で人気を得ていくと、彼女もスカ風の“Shoorah! Shoorah!”などダンサブルな佳曲を連発。同時にバラードでエレガントな魅力も振り撒くようになった彼女は、79年のTK離脱直前にはセルフ・プロデュースにも挑戦している。80年代に入るとエピックに移籍し、スティーヴィー・ワンダーに制作を仰ぐなどしてアルバム2枚をリリース。その後は、自身の愛称〈Ms.B〉を冠したプロダクション/レーベルを主宰し、最近作『Fit For A King』(2002年)に至るまでディープでモダンな作品をリリースしている。

 それと並行してバック・ヴォーカルなどの仕事も数多くこなす彼女は、同郷のグロリア・エステファンをはじめ、レジーナ・ベル、ジェニファー・ロペス、P・ディディら幅広いアーティストの作品にも関与してきた。昨今はジョス・ストーンのブレーンとして突如再評価された感もあるが、同時にエリカ・バドゥやアンジー・ストーン、ロイ・エアーズ、ニーナ・スカイ、ケリー・クラークソン、そして同郷であるジャッキー・Oの作品にも客演している。インテリジェントでありながらビア~ッチなソウル・シスターとして現在もなおマイアミの女傑であり続けるベティ・ライトは、いまもっとも旬なヴェテランなのだ。
▼ベティ・ライトが参加した作品の一部を紹介。