ここではより広いフィールドへの波及を見ていこう。古くからカートム~カーティスの楽曲を愛してきたUK勢だが、その筆頭はやはりポール・ウェラーか。彼はジャム/スタイル・カウンシルの両バンドでカーティスの“Move On Up”を歌い、スタカン『The Cost Of Lovin'』収録曲のミキサーをカーティスに託したこともある。ソロ名義では“I'm Changingman”(“I'm Changed Man”を意識?)なんて曲も。また、ブロウ・モンキーズは“Superfly”を歌ったりカーティス本人と共演したり。さらにスノウボーイはリロイ・ハトソンを、マザー・アースはインプレッションズを各々カヴァーするなど、レアグルーヴ~アシッド・ジャズ勃興期のUKにおいてカートムは精神的支柱だったのだろう。
もちろん本国USでも、フィッシュボーンによる“Freddie's Dead”など、カヴァー例は数多い。カヴァーではないが、御大自身のリメイク“Superfly 1990”を手伝ったレニー・クラヴィッツは自身の大ヒット曲“It Ain't Over Til It's Over”でモロな傾倒ぶりを示してもいる。さらに縁深いのはロックステディ~レゲエだ。チャカ・デマス&プライヤーズによる“She Don't Let Nobody(But Me)”の好カヴァーやトロージャン音源のカヴァー集が出ていたとかいう前に、インプレッションズがウェイラーズの〈ルーツ〉だったわけで……と、カーティスやカートムが残した楽曲の数々はグルーヴ/メロディー/メッセージのいずれもが秀でていたのだ。そして、そんな影響力を一望できるのが、ロック~ソウル界の多彩な面々によるカーティス・トリビュート『All Men Are Brothers』だったのは言うまでもない。
▼文中に登場したアーティストの作品を紹介
ロージャン編集のトリビュート盤『I'm So Proud(A Tribute To Curtis Mayfield)』(Trojan)
カーティス本人も参加したトリビュート盤『All Men Are Brothers』(Warner Bros.)