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第12回 ─ ホット・ワックス/インヴィクタス

ESSENTIALS 忘れられない名盤たち

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2006/03/30   21:00
更新
2006/03/30   23:34
ソース
『bounce』 274号(2006/3/25)
テキスト
文/JAM、出嶌孝次、林 剛

BARRINO BROTHERS『Livin' High Off The Godness Of Your Life』 Invictus/Pヴァイン(1973)

  ノースキャロライナ出身の男性カルテットによる唯一のアルバム。ロナルド・ダンバーらによるデトロイト産ビートを伴って、ディープな激唱リードを中心にバリバリと歌う彼らは、インヴィクタスにおけるテンプテーションズ的な存在。これというヒットはなかったが、アルバムには逸曲がひしめく。メンバーにK-Ci&ジョジョの叔父がいた……という事実にも納得のいく熱血歌野郎たちだ。
(林)

CHAIRMEN OF THE BOARD『The Chairmen Of The Board』 Invictus(1970)

  処女作“Give Me Just A Little More Time”の大ヒットで一躍インヴィクタスのドル箱となった元ショウメンのジェネラル・ジョンソン、ダニー・ウッズ、ハリソン・ケネディ、エディ・カーティスから成る4人組。リーヴァイ・スタッブス系の唱法を聴かせるジョンソンの魅力と、総天然色のまま満載されたH=D=H流70年代的デトロイト・サウンドの勢いとが火花を散らした名盤中の名盤だ。
(JAM)

DIONNE WARWICKE『Just Being Myself』 Warner Bros.(1973)

  レーベルこそホット・ワックス/インヴィクタスではないが、当時のH=D=H一派が全面援護した作品として忘れてはいけないアルバム。バート・バカラックらに育てられた〈黒い真珠〉ディオンヌが、デトロイトのソウルフルな音にコーティングされることで黒い艶を増している。アッシャーの“Throwback”やJ・ディラの遺作『Donuts』でも引用された“You're Gonna Need Me”はH=D=H屈指の名曲だ。
(林)

8TH DAY『The 8th Day』 Invictus(1971)

  デトロイトでも屈指の実力を誇るとされる名シンガー、メルヴィン・デイヴィスを中心とした黒白混合の8人組。100プルーフ・エイジド・イン・ソウルの曲が混在しているというややこしさもあるファースト・アルバムだが……何はともあれメルヴィンの燃えるような熱唱で引っ張っていく“You've Got To Crawl Before You Walk”、これ1曲でキマリだろう。この昂揚感ったらない。ミディアムにも悶絶。
(林)

ELOISE LAWS『Ain't It Good Feeling Good』 Invictus/Pヴァイン(1977)

  兄と弟がジャズ奏者のヒューバートとロニー、妹がシンガーのデブラというロウズ家の歌姫エロイーズ。これがデビュー作で、制作はブライアン・ホランドだが、スタッフを一新して再興した第2期インヴィクタス作品とあって、従来のようなデトロイト色は薄い。とはいえ、程良くディスコ・サウンドを採り入れた本作には、表題曲など躍動感のあるグルーヴィーな好曲が揃う。後にクラブ方面からも再評価。
(林)

FLAMING EMBER『Westbound #9』 Hot Wax(1970)


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  モータウンにレア・アースがいるなら、ホット・ワックスには彼らがいた。60年代から活動していたデトロイト出身のブルーアイド・ソウル・バンド。サイケなソウル感覚とパンク精神を宿した音楽性は、同郷のミッチ・ライダー&デトロイト・ホイールズやMC5あたりにも直結するもので、歌も演奏も実に骨太。〈西へ向かおう〉と歌った表題曲はヒッピー・ムーヴメントのアンセムとしても有名だ。
(林)

FREDA PAYNE『Band Of Gold』 Invictus/Pヴァイン(1970)

  H=D=Hとは旧知の間柄で、ジャズ・シンガーとしてデビューしていたフリーダの移籍第1弾。ポップ・チャート3位まで上昇した表題曲や絶品のスロウ“Now Is The Time To Say Goodbye”など楽曲は粒揃いの出来。爽やかなヴォーカルとデトロイト・ビート主体のポジティヴな作りには、〈インヴィクタス版ダイアナ・ロス〉とは別方向のパッションがある。次作『Contact』や、肉感ジャケが有名な『Reaching Out』も必聴!
(出嶌)

GLASS HOUSE『Inside The Glass House』 Invictus(1971)

  魅惑的なファルセット・ヴォイスとテナー・ヴォイスを2層で操るタイ・ハンターとラリー・ミッチェルの男性2人に、フリーダ・ペインの妹であるシェリー・ペインとパール・ジョーンズの女性2人が加わった混声グループ。魅力の中枢はタイが握っており、実際に彼が歌うバラッド3曲は、“Look What We've Done To Love”を筆頭として、あまりに美しすぎて言葉を失うほどの出来。名盤である。
(JAM)

HONEY CONE『Soulful Tapestry』 Hot Wax(1971)

  後にRCAからソロ作を出すエドナ・ライトを中心としたガール・トリオ。インヴィクタス関連ではもっとも成功したと言える彼女たちのサード・アルバムで、“Want Ads”“Stick-Up”といった黄金のヒット曲を含む。〈ホット・ワックス版シュープリームス〉〈ジャクソン5の女性版〉──そういった形容を上回るぐらいに、H=D=Hサウンドを真正面から浴びてパンチのある歌をぶつけてくる3人が眩しすぎる。
(林)

THE NEW LAMONT DOZIER ALBUM『Love And Beauty』 Invictus(1974)


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  名義のナゾはさておき、ラモン・ドジャーとブライアン・ホランドのデュオが残したシングルをまとめた編集盤。パーカッションを効かせたノーザン流儀がホットな“Don't Leave Me”、後のアーバンなラモンを予見させるライト・グルーヴもしっくり流れる“If You Don't Want To Be In My Life”など、シンプルながらも良い曲だらけ。ブライアンの脆弱な歌唱すらオツに聴かせるマスト盤だ。
(出嶌)

LAURA LEE『Women's Love Rights : The Hot Wax Anthology』 Sequel 

  シカゴ出身のデトロイト育ちで、南部録音でも有名なローラ・リー。ゴスペル上がりの激唱を持ち味とするシンガーで、ブライアン・ホランドの後押しでホット・ワックスに入社した彼女は、その個性を70年代前半のウーマン・リブの風潮と上手く噛み合わせ、本アンソロジーの表題曲や“Rip Off”といった曲で自立した女性像を強気に歌ってみせた。アル・グリーンと恋仲にあったのもこの頃だ。
(林)

100 PROOF AGED IN SOUL『Somebody's Been Sleeping In My Bed』 Hot Wax(1970)

  一部ではドゥルー・ヒル“In My Bed”のプロトタイプか!?とも囁かれた、寝取られ男の悲哀(?)をなぜか朗々と歌う表題曲で知られるグループ。これがファースト・アルバムで、多くのリードはデトロイトの名シンガー、スティーヴ・マンチャだ。グレッグ・ペリーらのファンキーな音と共に荒々しいしゃがれ声で畳み掛ける楽曲群はノーザン・ソウルの究極と呼べるもの。スロウもいい。
(林)

PARLIAMENT『Osmium』 Invictus/Pヴァイン(1970)

  デトロイト・ローカルのヴォーカル・グループからファンク界を蹂躙する巨大な存在になるまでの通過点を、ジョージ・クリントンが荒々しいデッサンのまま、ひと思いにまとめ上げた貴重な録音群。〈ファンカティア〉というよりは既存主義の〈デストロイヤー〉という印象のほうが強いのだが、そこにも確固たるファンクの鉱脈が存在していることを気付かせてくれるあたりが本作の凄いところだ。
(JAM)

THE POLITICIANS『Psycha-Soula-Funkadelic : The Hot Wax Sessions』 Sequel 


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  トロンボーン奏者のマッキンリー・ジャクソンが率いた、ホット・ワックス/インヴィクタスのお抱えバンド。今作は編集盤の体裁ながら、実際はインスト主体だった彼ら唯一のアルバム(72年)の全曲に、ロナルド・ダンバーが歌を乗せた71年のシングル“Love Machine”を追加したもの。パーラメントの元メンバーも在籍し、サイケ&スペイシーなファンクから美麗なスロウまでをクールにカマす。
(林)

RUTH COPELAND『Self Portrait』 Invictus(1971)


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  別掲のパーラメント『Osmium』をクリントン御大と共同制作し、ポリティシャンズの曲も書いていた英国ニューキャッスル出身の白人女性シンガー・ソングライター。ということで、このファースト・アルバムではエディ・ヘイゼルらが演奏に関わり、テープ逆回転音も含めたサイケ・ロックなサウンドに彼女のエモーショナルな歌唱が炸裂する。オペラ「蝶々夫人」のアリアまで歌っちゃう、カッ飛び具合も味としたい。
(林)

THE SMITH CONNECTION『Under My Wings』 Music Merchant(1972)

  ミュージック・マーチャントに残されたスウィート・ソウル・クラシック。モータウン作品を中心にソングライトを数多く行い、80年代に入るとラヴ・スミスを結成してそのままモータウンでソロとしても再デビューを果たすことになるマイケル・ラヴ・スミスが在籍していたグループだ。全編がスロウという徹底した内容で、作品はどれを取ってもエクストラ・スウィート……これはたまらない!
(JAM)

VARIOUS ARTISTS『GROOVIN' AIRLINES』 Pヴァイン 

  いくつものコンピが編まれているホット・ワックス/インヴィクタスだが、最近だとこれが好内容。定番曲から、ルシファーなどアルバム未CD化組の楽曲、ブラザリー・ラヴやジャスト・ブラザーズらのシングル・トラックまでを惜し気もなく収録したコンピ。天翔るような青空系のグルーヴがキャッチーに伝わる最高の名曲揃い。なかでもメルヴィン・デイヴィスの泣き踊りクラシック“You Made Me Over”の昂揚感たるや……。
(出嶌)