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第16回 ─ 枯れたことのない薔薇

ESSENTIALS 色褪せぬ輝きを放つ名盤たち

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2006/07/06   22:00
ソース
『bounce』 277号(2006/6/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、林 剛

ARETHA FRANKLIN 『Hey Now Hey (The Other Side Of The Sky)』 Atlantic/ヴィヴィド(1973)

  クインシー・ジョーンズによるジャズ志向の作風が賛否両論だったらしい問題作。が、憧れのダイナ・ワシントンを思わせるブルージーなスタイルでジャズ畑の演奏陣を完全に掌握する歌の磁場はどう聴いても圧倒的! 妹キャロリン作の名曲“Angel”、ボビー・ウォマック“That's The Way I Feel About Cha”の独創的なカヴァーも当然最高。ジャケは確かにヘンだけど。(出嶌)

ARETHA FRANKLIN 『Let Me In Your Life』 Atlantic/ヴィヴィド(1974)

  ジェリー・ウェクスラーやトム・ダウドらアトランティックらしい制作陣とふたたび組み、ダニー・ハサウェイ(今作にもエレピで参加)の別掲作と被る敏腕プレイヤーが醸し出す粋なグルーヴも抜群の名作。スティーヴィー・ワンダー作の超名曲“Until You Come Back To Me”や、ダニーも歌ったレオン・ラッセルの“A Song For You”を取り上げたあたりにニュー・ソウルも薫る。(出嶌)

ARETHA FRANKLIN 『Sparkle』 Atlantic/ヴィヴィド(1976)

  カーティス・メイフィールドが手掛けたサントラだが、正確にはインスパイア盤(映画は3人姉妹によるスター誕生物語)。リッチ・テューホとの共同アレンジによる穏やかかつファンキーな70'sカートム・サウンドに乗せて、アレサの瑞々しい歌声が全編に響き渡る。92年にアン・ヴォーグがカヴァーした“Giving Him Something He Can Feel”と“Hooked On Your Love”もここに収録。(林)

BILLY PRESTON 『Encouraging Words』 Apple/東芝EMI(1970)

  ビートルズやローリング・ストーンズとの共演でロック・ファンにも馴染み深いシンガー/鍵盤奏者で、惜しくも他界したばかりのビリーは、別掲の73年作や〈フィルモア〉などでアレサとも絡んできた。今作はアップルからの2枚目で、ジョージ・ハリソン(がビリーの助力を得て書いたはずの)“My Sweet Lord”を収録。同曲はアレサの4枚組版〈フィルモア〉でも披露されていた。(出嶌)

CAROLYN FRANKLIN 『Sister Soul : The Best Of RCA Years 1969-1976』 Kent 

  アレサよりも先にNY産の都会的なサウンドをバックに歌っていた妹のキャロリン。これはRCA時代の楽曲を集めた作品集。姉とは違った高めのハイトーン・ヴォイスでファンキー曲やバラードを歌い上げているが、アレサの“Angel”や“Ain't No Way”を書いた希代のソングライターでもある彼女だけに自作曲の出来は流石だ。当初は『Sparkle』への参加要請もあったという。(林)

CORNELL DUPREE 『Night Fever -The Versatile Sessions』 Empire Musicwerks 

  70年代を中心にアレサのバックを支えた敏腕ギタリスト。リーダー作としてはアトランティックからの『Teasin'』(73年)が有名だが、このたびカップリング盤としてリイシューされたヴァーサタイル時代の2作(77&78年)ではアレサ同様にポップス/ソウルの名曲をカヴァー。同時期にメンバーとして参加していたスタッフでの洒脱なギター・プレイが、ここでは存分に味わえる。(林)

CURTIS MAYFIELD 『Never Say You Can't Survive』 Curtom(1977)

  アレサの別掲作『Sparkle』と78年作『Almighty Fire』(CD化熱望!)を手掛けたカーティス・メイフィールドが、その合間にリリースした作品。当然、制作スタッフもアレサ作品と同じカートムの連中で、実に『Sparkle』の裏盤と言っていいほどそっくりな曲が並ぶ。ラストには“Sparkle”のセルフ・カヴァーも。この約20年後、カーティスは晩年作でアレサに鼓舞されている。(林)

DONNY HATHAWAY 『Extension Of A Man』 Atlantic(1973)

  アレサの72年作『Young, Gifted And Black』や別掲『Let Me In Your Life』で美しくメロウなエレピを披露していたダニー・ハサウェイ。その間に同じアトランティックから発表した本作には、“Love,Love,Love”の作者であるJR・ベイリーも含め、アレサ作品と共通のミュージシャンが参加。“Someday We'll All Be Free”は、92年にサントラ『Malcolm X』でアレサに歌われた。(林)

ERMA FRANKLIN 『Soul Sister』 Brunswick/ビクター(1970)

  アレサの姉(〈妹〉説もアリ)であり、そのコーラス隊としても活躍したアーマが、シカゴのブランズウィックに残した力作。表題が示唆するように〈アレサの姉妹〉というレッテルから逃れられなかったのは不幸だったかもしれないが、溌剌としたヴォーカルの親しみやすさはアレサにはない独特の魅力を放っているのでは? 惜しくも2002年に他界。(出嶌)

MAVIS STAPLES 『A Piece Of The Action』 Curtom/Charley(1977)

  アレサの『Sparkle』と同じくカーティス・メイフィールドが70年代中~後期に手掛けたブラック・ムーヴィー・サントラのひとつ。同じくカーティス製のサントラ『Let's Do It Again』(75年)をリリースしたステイプル・シンガーズの歌姫によるソロ作で、アレサを軸に考えると、このディスコ~ファンク志向は『Almighty Fire』の習作だったような雰囲気がしなくもない。(林)

THE SWEET INSPIRATIONS 『Sweet Sweet Soul + Sweets For My Sweet』 Spy 

  60年代後期のアレサ作品でバック・コーラスを担当した女性グループで、70年代にもメンバーのシシー・ヒューストン(ホイットニーの母親)らは個人名義で参加。これはそんな彼女たちのアトランティック発となるマッスル・ショールズ録音(69年)とフィリー録音(70年)の合体盤で、アレサが後にフィリー・ソウル曲を取り上げたことなども含め、多くの共通項を見い出せる。(林)

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