7月26日に12年の時を経て再発されるBad Stuffのアルバム『僕らは電気の原始人』。今回の〈GO!GO! NOISE McCARTNEY RECORDS〉は、NOISE McCARTNEY RECORDSから約1年ぶりとなる本作のリリースを記念したスペシャル鼎談をお届けします! 佐藤社長と岸田繁氏に、元Bad Stuffの森島映さんを加えて当時の京都思い出~今後のNOISE McCARTNEY RECORDSの方向性なんかをビシっと話してもらいました。
――くるりとBad Stuffは、今回のアルバムが出た94年頃からすでに交流はあったんですか?
岸田 いや、当時は僕、まだヘタレ高校生でしたからね。直接はそんなに交流がなかったんですよ。
森島 世代も離れてるし、くるりがライヴやるようになった頃には、俺はもう拾得(※1)では働いてなかったしね。
岸田 でも、僕の周りのミュージシャンはみんな、Bad Stuffが好きで。これ絶対聴け!云われて聴いたんが最初やったんですよ。僕らは当時、まだバンドを始めたところで、磔磔とか拾得とかでライヴをやることが夢やったんで、そこでライヴをやってたBad Stuffは僕らからすればある種のスターで。
森島 知らんかった(笑)
佐藤 だから、『僕らは電気の原始人』は僕らのラジオでもよくかけさせてもらってて。でも、京都の若い子らにBad Stuffの話をしたら、知らないんですね。
森島 そら知らんで。知らん、知らん(笑)。
佐藤 今回のアルバムにしても、元々ライヴハウスでは売ってたもんじゃないですか? でもそれを提示するもんがないと、京都に住んでても触れる機会がないんやなと思って……。だから僕らみたいな弱小レーベルができることって、友達にコレ聴いてみてっていう延長線上でしかないけど、だからこそきちんと紹介したいなって。
森島 いや、嬉しいですね。ありがとうございます(笑)。正直、自分の中ではかなり過去の作品やし、終わったもんでもあってん。でも、それがこうして解凍されて、同じ音源で二回リリースが味わえるねんから、僕はすごい幸せもんやと思う。
佐藤・岸田 いえいえ、こちらこそ……。
森島 でも今回、久々に聴き直してみたら、当時とは聴こえ方が全然違っててビックリした。
岸田 だから、例えば2年前に僕らがこれを出しませんかと言ってたら、また違ってた気がするんですよ。もちろん僕は当時これを聴いてカッコイイなと思ってたけれど、それをもっと外に広げるには当時はまだ、ミクスチャーとかファンク・ロックみたいな音楽の概念自体がなかったし、広がりにくい所もあったと思う。でも今ってジャンルとか年代とか、どんどんボーダレスになって行ってるし、なんていうんかな……。「ゼロイチイチゼロ ゼロイチイチゼロ(※2)」とか歌われたら、単純にブッ飛ぶと思うんですよ。
森島 確かに、日本でヒップホップが市民権を得たから今、これが出せるんかなって思うよね。
岸田 そうそう。だから今これが世に出ることっては、アンダーワールドを聴いてる人がクラフトワークを聴いた衝撃みたいなんがあるんちゃうかと思うんですよ。僕、京都に帰ってくるたびに思うんですけど、すごいマイペースに活動を続けてる人が多いですよね。森島さんもAUX(※3)続けてはりますし。
※1 酒蔵を改造した京都の老舗ライヴハウス。森島氏も一時期働いていた。
※2 『僕らは電気の原始人』2曲目に収録されている“デジタルタジタジ”のワンフレーズ
※3 森島氏が現在、活動しているバンド。